小説
□夏の憂鬱(リクエスト小説)
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今学期最後のHRが終わって間もなく、1人の少女が近づいてくる。
「おい、発。だらけてないでもっと背筋を伸ばしたらどうだ?」
こんなに暑いのに、その子は何でもないような顔をしている。
「うるせー。暑いもんはしょうがねーだろ」
机に突っ伏したまま答える。
「暑いと思うから暑いんだろ」
その子の名は太公望といった。
「何だよ、お前は暑くないのかよ」
「わしか?」
頭が良くて、顔だって文句なしに可愛くて、小柄で。
「暑いに決まっておるではないか」
口が減らない。
汗なんて少しもかいていないくせに。
誰に対しても明るくて、人当たりが良い。
でもあまり親しい友人を作らない。
だけど俺とはよく話した。共に学級委員をしているからかもしれないが、他の野郎よりは近くに居れるし。
蒸し暑い教室で、太公望と話している俺を羨ましげに見ている男共に妙な優越感。
「明日から夏休みだの〜。発はどこか行くのか?」
いや、お前と遊びたいんだけど。
「いや〜、まだ分かんね」
曖昧に答えてみる。
太公望は俺のことをどう思っているのだろう。
「海でナンパ。合コン」
そんなところか?
笑って言う太公望に乾いた笑いを返事として返した。