小説
□「月世界」
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「もっと他に言い方があろう?」
小さく悪態をつく。
「だってそうだから仕方ないです」
男はまたからかう様に言う。
でもやっぱり声は優しくて。
何だか泣きそうになった。
「のぅ、お主は月に兎はいると思か?」
「さぁ?いるかもしれないし、いないかもしれませんね」
「お主はそういう言い方しか出来んのか?」
「だって誰も見たことがないんですから」
「そうだの」
会話が途切れて
2人は手を繋いだ。
かたくかたく。
ギュッと。
手を繋いだ。
放れないように。
放さないように。