小説
□Missing
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人ごみに溢れた通りで、無意識に、そして足早に追いかけていた。
何故か必死で。
人ごみに紛れて見えなくなっても
僕は、その後ろ姿を
探さずにはいられなかった。
『終わりにしましょう』
あの頃、別れを決意し、
関係を切ったのは
紛れも無い僕なのに。
ふと我に返って
足を止めた先に花屋があったので、何の気もなしに入って、
適当な花を集めて花束を1つ作って貰った。
それを抱えてまた人ごみに。
どこに向かって歩いているかなんて
自分でも分からない。
ただただ、あの頃を
あの幸せを思い出していた。
僕が、今みたいに
花束を買って貴方に会いに行ったことが
あった。
そのとき貴方は、不審そうな顔を隠そうともせずに僕を睨んだ。