幻想水滸伝
□見つめる先に
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「人──だと?」
激しい炎で揺れる視界の端に、人影を見た。
だがそんなはずはないのだ。
此処に住んでいた人々は、既に消炭となっている。
彼が虐殺の限りを尽くし、その後火を放ったのだから。
「危険です!」
炎の中に入って行こうとする彼に気付いたのか、配下の兵が声を上げる。
そうは言いながらも駆け寄ることはしない。
この男に限らず、彼に必要以上に近寄るような者はいない。
誰もが彼を怖れている。
声を届かせただけ、この男はマシな方だった。
彼は配下の声を無視し、人影を捜して視線を巡らせる。
捜していたものは、程なくして見つかった。
そこだけが、明らかに異質だったために、見落としようもなかったのだ。
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