幻想水滸伝

□見つめる先に
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少年が、倒れていた。

旅人なのだろうか、異国風の軽装に身を包んだ、小柄な少年だった。
右手の甲を左手で押さえ、そのまま胸に抱え込むような体勢で倒れている。
直ぐ傍に落ちている黒い柄の棍は、少年のものだろうか。

彼が斬った中にこの少年はいなかった。
炎にやられたわけでも、瓦礫の直撃を受けたわけでもないだろう。
何故なら、炎も瓦礫も少年を避けていたからだ。
不自然に少年を避ける火の粉や飛礫からは、そうとしか思えない。

彼は少年を見下ろしたまま、動きを止めた。

炎は穢れたものを清める浄化の力だ。
その力を受け付けない少年。
炎が意思あるかのように、傷つける事を躊躇う存在。

彼は引き寄せられるように膝をつき、少年に触れる。

しばしの逡巡の後に、ほとんど破壊の為にしか使ったことのない腕で、壊れ物を扱うように抱き上げた。


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