□『火神君の事が好きだった赤司君が逆行した話(目覚め)』
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枕元の携帯に手を伸ばす。
連絡ツールでもある情報端末は常に傍に置いており、眠る時でも必ず枕元に置く。
それは中学の頃からの癖のようなもので、昨夜の記憶はなくとも携帯はしっかり思う場所にあった。

ただし、記憶の物と形を変えて。

「……」

いや、正確には記憶にないわけではない。
二つ折りの懐かしい形状の、黒い携帯電話。
この機種は中学の始め頃に持っていた物だったはず。
それにしては──赤司は物をぞんざいに扱う性格ではないが、これはさすがに──綺麗過ぎやしないだろうか。
十年以上も前の物が、こんな光沢を保っているはずがない。
そもそも、何故此処にあるのだ。

電池が生きているらしく、開いてみれば液晶が明るくなった。
何の手も加えていないデフォルトの画面中央に表示された時間は、驚いた事に壁に掛かる電波時計とピッタリ合っている。


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