幻想水滸伝
□見つめる先に
1ページ/22ページ
放たれた炎は、近隣のすべてを呑み込んだ。
その火の粉が舞う中で、彼は笑い、低く呟く。
「燃えろ」
炎はいい。
あらゆるものが平等に燃えていく。
穢れたものが清められ、やがて新たな命がこの地に芽生えるだろう。
すべての地を、そうして清めてまわりたい。
この地に惜しむ命などない──ブタとムシケラしかいないのだから。
俺が狂っていると人は言う。
だが、狂っているのはこの国だ。
この国と、この国に這いずる穢れた命だ。
それとも世界が──世界が狂っていると言うのなら、世界ごと消えるがいい。
この命も共に。
それでいい。
炎に照らされた顔に、彼には似つかわしくない自嘲めいた笑みが浮かぶ。
視界の端に違和感を覚えたのは、その時だった。
.