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□決めつけてはいけません
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今日も空っぽの幼なじみの席。先生が話す内容は全て右から左へと流れている。また、休みか。とぼぅっと空っぽの席を見つめていた。




□■□




「俺は、やはり、学校は向いておらぬ」

俯きながら今にも泣き出しそうに眉をハの字にする幼なじみこと真田幸村。幸村は昔から人と話すことが苦手だった。少しツンとした言い方をすれば傷付き泣き出すような子だった。所謂超ネガティブ思考なのだ。そのために部屋から出ることを拒み学校へも来ない日々が増えてしまった。一時期は来れたというのにまたなにかあったんだろうか。

「また何かあったの?」
「俺は、一生懸命話そうと頑張ったのだ。なのに相手は何処かに行ってしまっていて、」
「うん」
「そしたら友人のような方と笑っていた。きっと俺のことを笑っていたのだ。そうとしか思えぬ…」
「あのさあ幸村。むしろ無表情で喋ってたら怖いでしょ。幸村のことで笑ったりなんかしないよ」

どうにか元気付けようと励ますのだけど、幸村は落ち込んだままだ。他人を信用できず殻に閉じこもっているばかり。それじゃあこの先幸村は生きていけない。この世の中コミュニケーションが取れない人間ほどいらないものはない。いつか幸村が社会に出たときこの状態では確実にニート生活まっしぐらだ。さすがに幼なじみがニートっていうのは嫌だ。だからなんとか今の時期に人と喋ることを克服してもらわなくてはならない。そのためには学校に来るのが一番なんだけど。

「大丈夫だって。そんな何もしてない幸村嫌う子なんていないよ」
「いや、俺はクラスにいてはならぬのだ。俺などいても邪魔でしかない」
「そんなことないよ。幸村が来てくれたら私嬉しい」
「…嬉しく思ってくれるのはごんべえだけでござる」

そう言ってまた膝を抱えて俯いてしまった。幸村を学校に行かせるのはかなり時間がかかるかもしれない。でもこのままじゃダメだ。いつまで経っても変われない。無理矢理連れ出そうか、とも考えたのだが。

(…できないんだよね)

佐助が言っていた。旦那を無理矢理連れ出すのはやめときな。ごんべえちゃんまで信用しなくなると今より厄介だから、と。どうやら佐助が中学生くらいの時に連れ出したところ、一ヶ月近く話してくれなかったうえ引き込もったのだとか。
そうなってしまったら幸村が外に出てくれることがなくなってしまうかもしれない、前より悪化してるんだから。甘やかしちゃダメだというのはわかっているのだけどどうしたものか。

「心配してるよ、みんな。いつも学校来ないし…伊達くんとか長曾我部くんとか、すごく心配してる」
「政宗殿と、元親殿が…?」
「そうだよ。幸村が来るの待ってくれてる。別に無理して話さなくてもいいんだし…」
「…しかし無視は…」
「無視するんじゃなくてさ。自分が話すのが苦手だってことを、言ってみたらどうかな?」

別にみんな幸村のことを嫌いな訳じゃない。むしろ幸村はイケメンの部類に入るので人気だ。それに付け加え頭が良く運動もできる。ネガティブで話し下手なのは照れ屋だと見られていて逆に人気を上げている。前このことを伝えたらそんなの嘘だ、と言われてしまったのだけど。

「…ごんべえはどうしてそこまでして俺のことを気にかけるのだ?」
「そんなの、幸村が大切だからだよ。私の大事な友達」

きょとんと目を見開く幸村。そんな幸村をぎゅっと抱きしめる。カチリと固まってしまった幸村に変わってくれますように、と願いをこめて。幸村が小さな声でごんべえが言うなら…と言って恐る恐る私の背に手を伸ばした。





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(2012.03.27)


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