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□君の声を聞かせて!
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私の同僚は無口だ。そして無駄がない。話す時はいつだってメールだ。わざわざ打つくらいならしゃべれよってよく思う。そんな私と小太郎は北条家のボディーガードをしている。情報収集やら北条家をよく思っていないやつらのことを探ったりもするから忍、みたいなもんだ。そんな小太郎は伝説の忍と有名だ。皆どんな姿格好をしているかなど知らないのだけど。
そんなことより問題は小太郎が喋らないことだ。ずっと同じ仕事をしていたのに。

「ねぇ、こた。喋った方が早いでしょ」
『別に打ったって遅くない』
「一人で話してるみたいじゃないの、私」
『大丈夫、ちゃんと聞いてるから。会話もしてるよ』
「会話って言えるのこれ。ていうか私が一人で話してるっていうのは無視?」

そういうと小太郎はふい、と視線を逸らした。そういえば目もあまり見ない。たまには見るけど…。初めて変な模様みたいなのも取って顔全体を見た時は声にならない悲鳴を上げたもんだ、懐かしい。言ってしまえば小太郎は超絶イケメン(私の好みドストライク)だったというわけで。これで声がわかれば…目の保養と耳の保養が一気に出来るわけだ。

「どーしてそんなに話したがらないのさー」
『逆にお喋りな忍なんておかしいよ』
「佐助とか忍まがいじゃん?あれはお供か?どっちでもいいけどよく喋るじゃんか」
『あれはただの馬鹿だから』
「…なるほど」

うむむ、流石伝説の忍と言われるだけある。口元に弧を描かせてちょっぴり嬉しそうな小太郎が私を見る。くそう、言いくるめられた。面取れよ面。

「じゃあさ、」

小太郎が首をこてん、と傾げる。図体のわりに可愛いからなコイツ…。

「その面ずっと取るか声いつも出すかって氏政様に命令されたらどうするの」
「!!」

ぎょっとする小太郎。そして一人あわあわ、と焦り出し悩み始める。忙しいやつだ。忍がそんなに感情豊かで大丈夫かいってさっきのこたに言い返してやりたいね。別に佐助を庇う訳じゃないけど。にしても長いこと悩んでるな。そこまでもしも話に悩まなくてもいいのに。しかし小太郎が真剣に考えてくれているため暫し待つことにした。もしも話だがどちらか至福がいただけるのだから。するとようやく決まったのかこちらに向きなおる。わくわくしながら小太郎を見ていると、

『それなら面を取る』
「ちぇっ。ですよねー。じゃあ取ってね?」
『えっ?』
「ほら取ってもいいんでしょ。取っちゃいなよyou」
『いやいや、youって意味わかんないし取るなんて言ってないよ』
「じゃあ喋って?」
『えええ』
「一回でいいよ。それで許したげる。面を今日一日取るか今声出すか!!」

また焦り出す小太郎をニヤニヤしながら見る。さあ、どっちで来るか。するといきなり消えてしまった。しまった、逃げられた。チクショウ、と一人心の中で舌打ちしているとザア、と風が通り抜ける。そして背後に気配。振り返ろうとするがそれは制止されて耳元に気配は近寄ってくる。こんなことするやつ小太郎くらいしかいないんだけど。

「ちょ、こた何すんの」
「……………ごんべえのばか」
「…え」
『ちゃんと言ったよ』

そう書かれた画面を見せ付けられるがそんなことより小太郎の声だ。初めて聞けた。もしかしたら私が一番かもしれない。なんて頭では考えているが、いまだ唖然としていて働かない頭を無理矢理使いかろうじて言えた言葉とは。

「…やばい、声までド直球ストライクいただいたわ………」





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BASARAの世界だから、こたが風になっても仕方ないよ、ね………

(2012.04.03)


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