short

□紅く汚れたその中身
1ページ/1ページ

(狂・死ネタ)


くだらない。日常生活に変わりがない。そんな生活に俺は飽き飽きしていた。何故毎日決まった時間に起きて、決まった時間に学校へ行く。一週間決められた授業を受け、定刻に家へ帰る。他愛のない日常。それは幸せなことなのかもしれないが、刺激が足りない。そう思っていた。
ある日変わった女に出会った。それは変わりなく日常の中に溶け込むのだろうと思っていたのだが、そいつだけは違った。電波のような、イカレた事を言う奴だった。

「もし未来を好きなように作れたら、どうする?」

第一印象は変な奴、だった。未来を、好きなように作る。それは今のつまらない日常生活を変えることができる、ということだろうか。暫し考えたあと口を開く。

「平凡な日常を壊す。平和ボケしている顔はもう見飽きた」

きっぱりとそう言えば女はにぃっと口端を上げて、戦争でもする気かいお兄さん。と言う。別に戦争がしたい訳じゃない。だが危機感もなくのんびりと平和なのが当たり前だというように過ごしているのがなぜか無性にイラついた。全身の血がたぎるような、そんな刺激が欲しかった。すると女は、じゃあやっちゃおうか。とだけ言って踵を返した。何がしたかったのだろうか。その時はこれから起こる非日常なんて全く予知できなかった。




□■□




電波女と会った次の日、突然その時がきた。何故か不良に絡まれるという典型的なパターン。でもそれだけでよかった。たった小さな出来事が俺にとって刺激となった。喧嘩を売ってきた不良を全員動けなくなるまで叩きのめした。快感だった。まるで今まで変わりのない日常にいらついていたのがまるで嘘のようで。昔味わったことがあるような、そんな感覚が俺を襲う。嗚呼、この程度じゃまだ足りない。もっと、もっと刺激が欲しいと脳が体を動かす。病院送りじゃ物足りない。そう、もっとだ。もう二度と動けなくなるくらい−

気づいたら目の前にあったのは赤、赤。あれから非日常が続いた。いや、むしろそれが日常と化しているのではないかと錯覚するほどに。毎日誰かに喧嘩を売られれば殴り合い。日に日にエスカレートしていく相手の傷。ただ殴るだけじゃ物足りず、気絶したあとも殴り続け骨が折れているやつもいた。だがしかし、今俺の手にあるのは先端が尖っている鉄の棒。ぴくりとも動かない相手の男からはとめどなく血が溢れていた。男を刺した瞬間ぶわりと体中に電流が走った。ぞくぞくと鳥肌が立つような感覚が俺を襲う。今まで味わったことのないような快感。もっと、もっとだ。まだまだ味わいたい。くらりと快感に酔いしれていると足音がした。カツリと軽快な音は多分女物だろうか。ゆっくりと振り返るとそこには電波女がいた。

「うわ、派手にやっちゃってるねえ。どうですかい?こんな人生」
「あぁ…まだ、足りぬ。もっと欲しい…癖になるな、これは」
「さっすが旦那でさぁ。でもこれ後始末タイヘンなんだよー?さーて、お仕事お仕事っとー」

手慣れたように男を鞄に詰める。後から数人男が来て後片付けをして、10分後には痕跡はなに一つ残っていなかった。

「…手慣れたものだな」
「昔っからこーゆー役割っていうのは慣れてますからねえ。まっ甘く見ないで下さいってことでさ!」

カラカラと笑う女を見ていたら先ほどのことを思い出し、また心臓がドクリと跳ねる。ざわつく血が、脳が殺せ、殺せと囁きだす。俺は本能がままに女を突き飛ばし跨がった。一瞬きょとんとした顔をしたもののまたすぐに笑みを浮かべる。

「全く、旦那ったら快感に弱いんすね。もしかして絶倫?すぐに興奮しちゃうんですかあ?」
「…そうだな。すぐに渇いてしまう。だから抑えられぬのだろうな」
「待て、と我慢、を覚えなきゃなりませんねそりゃあ」

無意識に手に持っていたものを腕に振り下ろす。すると目の前に飛び散る赤。それを見た途端また電流が駆け巡る。うぅ、と呻く声がまたいっそう俺を駆り立てて何度も、何度も繰り返す。女の服が何色だったのかわからないくらいに赤く、黒く染まる。それでも女は笑っていて口を開く。

「全く…言った側から…待てないん、すね…」
「すまぬな。どうも止められる気がしない」
「謝って、ないっしょ…この、鬼畜め…」

ひゅーひゅーと息をする女の首に手をかける。ぐっと力を籠めれば苦しそうに悶える。

「礼を言おう。このような快感を味わせてくれて。このような壊れぬ体をくれて」

首を絞めている為だろう、女は口をぱくぱくと動かすがそれは声にならずに。ぱたりと腕が地面に落ち動かなくなったのを確認して手を離した。死んでなお、笑っているコイツはなんだったんだろうか。そういえば名前を聞いたことがないのを思い出した。しかし何故か記憶に残っているその名をぽつりと呟いた。

「また、やってしまってすまなかったごんべえ」

自分でもわからないが無意識に出た言葉に驚きながらも長居をするわけにもいかず、動かなくなった女を置いてその場を後にした。





()



何が書きたかったのか


(2012.04.22)


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ