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□始まる両片思い
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高校生活で一番辛いもの、それはなんだ?決まって行われるテスト、返される通知表、夏休みの課題、部活の合宿、体育祭、スキー合宿…どれだって辛い。辛いに決まっている。でも私は違った。高校生活で一番辛いもの、それは−

「おい、話を聞いているのかごんべえ」
「エェ、モチロン聞イテオリマストモ」
「何故カタコトになる。貴様、聞いていなかったのか!」
「いや、ほんとちゃんと聞いてましたって!」
「ならば復唱してみろ!」
「…あははー」
「聞いていないではないか!!」

ダンッと机を叩く石田先生。もうこの人が三年間担任とか高校生活心折設計じゃないか。今日も私は一人残されて石田先生の愚痴を聞いたり無理矢理勉強させられたりしているわけだ。助けて豊臣先生。

「家康が貴様を気に入っているとは何事だ!?あの狸は私のクラスに授業がないというのに!何故だ!色目でも使ったのか!?あの家康にッ!何故だッ!!私では不満だというのかッ!!」
「知りませんよ…」

不満しかないです先生。なんで私だけ残されて愚痴聞かなきゃならないんですか。ちらりと時計を見る。あ、もう6時近いじゃないか。まーだ終わらないのかなー。いつもほとんど家康先生の愚痴ばかりだから正直飽きた。もうちょっと面白い話題とかないのかな、この人。…あるわけないか。

「とにかく全て家康のせいだ!!貴様が話を聞かないのも、時計ばかり見ているのも全て家康が生きているからだ!!今すぐ息の根止めてくれる!!」
「豊臣先生と竹中先生がまた怒りますよー」
「うぐッ…それは…」

二人の名を出した途端にしゅんとなる先生。あ、これだとなんか可愛らしいなあ。でも毎日毎日愚痴を繰り返されていることを思いだしすぐにいつも通りになったのだけど。ルックスは最高なのに何故こうも中身が残念なんだろうか彼は。疲れてきて何気なく外を見ると家康先生が生徒に囲まれているのが見えた。やっぱり人気だなあ。当たり前か、あの人気No.1の家康先生だしね。なんてなんの気もなく見つめていると横からギリギリと歯ぎしりが聞こえてきた。

「貴様もか…貴様も私を裏切るのかごんべえ!」
「えっ、なんの話ですか」
「家康、家康…家康などただの狸ではないか!どこがいいのだ、言ってみろ!」
「いや、狸可愛いですし…狸が可哀相ですよむしろ」
「知るかッ!私は狐の方が好きだ!」
「…カップ麺ならきつねのが好きですよ。蕎麦嫌いですし」
「私はきつねよりもたぬきの方が好きだ!」
「どっちなんですか」

狸嫌いなくせにたぬきは好きなのか。家康先生はいいのか…狸狸と散々言っておいて…。疲れを通り越して呆れが入ってきたところでようやく石田先生が息切れしだした。お、そろそろ終わるかな。今日は中々早く終わってくれたじゃないか。助かるなあー。

「…もういい、今日の貴様と話していても無駄だ。もう帰れ」
「はーい、石田先生さようならー」

さっさと帰ろうと席を立ち上がると、待て、と制止させる。なんなんだ、どっちなんだよ全く。

「…最後にもう一度だけ聞く。家康などのどこがいいのだ。私のどこに不満がある」
「別になんとも思いませんけど…」
「不満があるなら言え。私はごんべえに家康よりも劣っているなどと思われたくはない」

何故か真剣な表情で、静かに言う石田先生に驚いた。なんで帰り間際になってそんなこと言い出すのだろう。

「別に…石田先生が劣っていることはないと思いますけどね」
「本当にか?」
「はい」

まあ若干嘘が入ったけど気にしないことにする。その後知った話なんだけど、石田先生は私の前以外でそんな話はしないらしい。それから石田先生のお気に入りというレッテルを貼られて三年間過ごすことになったことが一番の辛いことなんだろうな、と深いため息をつきながら肩を落とした。





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五千打企画参加ありがとうございました!
ギャグも甘も綺麗さっぱりない駄文で本当に申し訳ありませんでした…
書き直しいつでも受け付けております!


(2012.05.03)


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