DRRR!
□カゲロウデイズ
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-繰り返した夏の日の向こう
8月15日。
本日晴天。
うぜぇくらいド晴天。
「あっちー」
額がピクリと筋立つのを感じた。
夏真っ盛りとは言えこの暑さは本気で病気になりそうだ。
そういうと、涼やかな声が隣から降ってきた。
「ふーん。静ちゃんでも病気になるような現象が発生したら全人類絶滅の危機かもねー。」
人ラブな俺としては由々しき事態だよっ!てわけで病気にならないでよねシズちゃん!!となんとも自己中な心配に呆れ返りながらも、俺は幸せだったんだ。
【カゲロウデイズ】
「あ゛ーーっっうぜえっっ!!暑すぎんだよったく。」
拭っても拭ってもあふれでてくる汗を乱暴に振り払いながら空を睨み付ける。
「天気に怒鳴り付けるなんて、単細胞とは知ってたけど遂に本格的にぶっ壊れちゃった?」
せせら笑うその声に拳を飛ばすがあっさりかわされる。
「っと。危ないなぁ〜。この子に当たったらどうするつもりー?」
ケラケラ笑いながら、臨也はそっと膝の上の黒い猫を抱き締める。
「当てる訳ないだろ。大体どっから連れてきたんだよそいつ。」
ハァと溜め息をつき、黒猫を見つめる。
「さぁ?なんか気付いたら寄ってきたからさぁ
。可愛いでしょ?」
そういって無邪気に黒猫に頬を寄せるお前の方が百倍可愛いとは口が割けても言えない。
「…そんなモジャモジャしたの抱いて暑くねぇのか?」
赤くなった顔を反らしながら尋ねると、臨也はこんくらい平気だよーと笑った。
「でもまぁ」
その笑顔に一瞬影が走る。
「夏は嫌いかな。」
何の脈絡もなく呟かれた台詞。なのになんでだ?
妙に胸がざわついた。
-黒猫は避けて通れ
幼い日に聞いた迷信が脳裏を掠める。とたんに先程まで愛らしく写っていた黒猫がやけに不気味に見えた。
「なぁいざ「あ!」」
伸ばした手が宙を掻く。
「待ってよー」
軽やかに逃げる黒猫を追う臨也。
なんだか平和な雰囲気にさっきまでの妙な危機感も薄れ、何考えてんだと自分で自分を笑いながら臨也の後を追う。
「おーい、もうほっといてやれよー」
木々の隙間、風鈴の音、やけに煩い蝉の声
「おい」
逃げ出した猫の後を追いかけて
「おい臨也とま」
飛び込んでしまったのは
「いざやっっっ!!!!」
赤に変わった信号機
キキィーッッッ
ドンッ
赤が舞い散った。
「きゃーっっ!!!!!!!!」
「人が跳ねられたぞ
ーっ!!!」
「救急車!誰か救急車!」
響く悲鳴の大合唱。
主旋律は臨也を引きずるトラックの鳴き声で。
「え?」
待て、待てよ、おい。なんだよこれ、なんなんだよっ!!おいっっ!!!
混乱仕切った頭が認識を遮る。
目の前を染める
紅い空。
ぐるんぐるんと混ざって、
キモチワルイ
「うそ…だろ…?」
目の前が赤く紅く眩む。
歪む世界にただ一人浮かぶ存在。
微笑んだのは俺に瓜二つの顔を持つ青い着物の男だった。
「嘘じゃないよ。」
「っ!?」
その笑顔を最後に、世界は赤く暗転した。