Fake Moon
□1.
1ページ/2ページ
やっと…
やっとここまで来た…
「…」
私はゆっくりと顔を上げた。
広がるのは、星一つない夜空と、星の代わりに散りばめられたネオン。
「…池袋。」
その地の名をそっと呟く。
「…もうすぐだよ…兄さん」
ポケットの中、冷たいそれを握りしめた。
「必ず…あいつを殺してみせるから…」
虚空を睨み付け、憎きその名を口にした。
「折原……臨也…!!」
きつく握った手のひらを、冷たいナイフが赤く染めた。
「あっれー?」
呑気な声に振り替えれば私と同い年くらいの少年が二人。
「ちょ、やめなよ正臣!!」
あたふたと相方をたしなめる童顔黒髪の少年。
「いーや!あんなかわいこちゃんを放っておくなんて俺の名が廃る!!」
調子よく力説する茶髪にピアスの少年。
「…誰?」
警戒を込め睨み付ける。
「ほら明らか警戒されてるじゃんっ!いやぁ、すみません何でもないんです!!ほら正臣行くよ!!」
愛想笑いを浮かべながら必死に茶髪の腕を引く黒髪。
「いーや、警戒なんてこれから解けばいい話だろう?という事で初めましてお嬢さん!!俺は紀田正臣!好きなものは女の子!趣味はナンパなフツーの男子高校
生でーす☆ちなみにこっちのもやしは竜ヶ峰帝人。」
黒髪ー竜ヶ峰帝人を振り切り派手なポーズを決め自己紹介する茶髪ー紀田正臣。
「…」
こいつらは敵だろうか?まぁどうでもいい。
「うわぁ第一印象から最悪を作り出す自己紹介だね。流石正臣。あともやしとかウザイ。」
「ちょ、そこはもうちょい愛のあるツッコミをしてくれよ帝人!!」
私はあいつの居場所を探さなければならない。
「√3点。」
「脈絡もなくなんなんだよっ!!ツッコミか!?それがお前の愛のあるツッコミなのか!?」
こいつらが敵だろうが無害だろうが関係ない。
「うるさいよまさおっっ!!!」
ー私に味方などいないのだから。
一気に地を蹴り、帝人の背後に立ち喉元にナイフを突き付ける。