Fake Moon

□1.
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「!!帝人っ!!!!」

駆け寄ろうとする正臣をナイフを1ミリ近付け牽制する。

「質問があるの。」

冷ややかな声で告げる。

「…なんだ…?」

先程のおちゃらけた態度が嘘のように、声色を低めこちらを見据える正臣。

「折原臨也って知ってる?」

「っ!!」

名を出した途端誰正臣の表情が歪む。

「…何だよ。あいつに仕事の依頼でもする気?」

嫌悪感を隠しもせず吐き捨てる正臣。

「無駄口叩いてないでとっとと居場所を吐いてくれない?」

ナイフを更に近付ける。

「痛っ!!」

「帝人!」

「私あまり気が長い方じゃないの。」

「わかったよ言う!言うから帝人を離せ!!」

帝人の首につたった赤を見て正臣はあっさり折れた。

「奴はここにはいない。」

その言葉に私は目を見開いた。

「嘘よ!確かにここにいると聞いたわっ!!」

激情のままナイフを食い込ませる。帝人の微かな呻き声が聞こえる。

「違う嘘じゃないっ!!」

必死に叫ぶ正臣。

「あいつは数年前にここを出ていった。」

「…じゃあ…今はどこに?」

気を落ち着かせ尋ねる。

「新宿。今は新宿に事務所を構えてる。たまに池袋に来ては問題を落と
してくけどな。」

…新宿

「事務所の場所は?」

「…ここだよ。」

ざっくりと書かれた地図を手渡される。

「ここに…」

ここに奴がいる。
私の目的。
私が今まで生きてきた目的。

「用は済んだわ。」

「うわっ!!」

帝人を突き飛ばすと、よろめく帝人を正臣が慌てて受け止める。
踵を返し路地から歩きだす。

「教えてくれたお礼に質問に答えてあげる。」

ふと立ち止まり、顔だけ振り返る。

「私は 月詠 紅羽 。」

ナイフを緩く振りながら微笑む。

「ちなみに折原に仕事の依頼に来たと言う推測は間違いよ。」


それは半分、自分の意思を確認するために。

「私は折原臨也を」

手を染める赤がネオンに反射する。

「…殺しに来たの。」

呆然とする帝人と正臣を尻目に、私は路地から歩き出した。

ー憎きあの男の元へ向かって
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