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□始まり
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―2012年、春―

新学期早々、空は広々と晴れ渡っているというのに、俺たちはこの狭い教室にさっきからずっと押し込められていた。予定時刻からもう15分近く過ぎている。すると、ようやく教師が姿を現した。

「ではこれより、ゼミの抽選結果を正面に掲示します。前の人から順番に速やかに確認し、指定された教室に移動してください。」

ざわざわざわ。結果を見て、教室のあちこちから喜びや落胆の声が上がる。さて、俺の希望する秋本ゼミには受かっただろうか。文字の羅列に丁寧に目を走らせながら、こんなことをするのは大学の合格発表以来だなと思った。もう1年前の話である。

「佐藤、佐藤……よし、秋本ゼミだ!」
佐藤なんて名字は大勢いるから探すのに少々手間取ったが、確かに書かれた佐藤真悟の文字に安堵する。さあ、では4号館に向かうとするか。人ごみの間を縫って、俺は外に出た。
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