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□衝突
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「どうしようか。」
そう切り出したのは智鈴だ。しかしすぐにいいアイデアなど浮かぶはずもなく、誰も答えないまま黙っている。こういうのは柄じゃないが、ここは俺が発言するしかないか。
「ちょっといい?これってつまり、企業研究みたいなものだよな。就活準備だと思って、俺たちの気になる業種を調べればいいんじゃないか。」
すると先ほどまで黙っていた皆が一斉に意見を言い始めた。
「それいいな!テレビ業界とかどう?」
「えっ、私は金融系がいいんだけど。」
「…海運。」
「私は芸能プロダクション!」
「ストップ!全然まとまらないな。それに雅にいたってはもう現実とかけ離れてるし。」
「そんなことないよ!私の夢は歌手になることなんだから!!」

…え、今何て?
「何言ってんの、そんなこと言って恥ずかしくないの?」
「!!!…私は本気だよ。ばかにしないで!」
それだけ言うと、雅は教室を出ていった。
「真悟、今のは無いだろ。」
見かねた秀が慌てて追いかけようとするが、
啓太がそれを止めた。
「…追いかけるのはお前じゃないだろ。」
「真悟君、あんたちゃんと謝りなさいよ!」
智鈴が鋭い目つきで俺をにらむ。いつの間にか1班の奴らまでこっちを見ていた。
「わ、わかったよ。」
悪気は無かったのだが…。
俺は雅の後を追って走り出した。

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