世界革命(World Revolution)
□2.穴の噂と雨女
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朝早くは紅葉君は家にいない。
どこかに行ってるのはわかるが、すぐに戻ってくるから対して気にもとめていない。
「今日も、イイ天気だね。お父さん、お母さん。」
私はぬいぐるみのマイケルとマリアンヌにそう言う。
マイケルは白い犬のぬいぐるみで、マリアンヌは黒い猫のぬいぐるみ。
どっちも手作りのプレゼントだ。
私はその二つのぬいぐるみに挨拶をするのが習慣であり、いつもの光景だ。
それから散歩をする。
これもいつもの習慣だ。
ふと、日照利公園に立ち寄ってみるとカブトムシのぬいぐるみと相撲する少年や、犬と一緒に日陰ぼっこをしてるおじさんやらがいるけれど、私が目にとめたのは一人のこげ茶色の髪を風で揺らしている無表情の男の子だ。
「やほー!千郷君!」
「・・・・・・あ。京先輩じゃありませんかー」
この子は移雲千郷。
移雲財閥という結構名の知れた組織の若社長という噂がある。
頭脳明細、運動もそれなりにでき、IQが高い。
でも、性格は腹黒で毒舌で人間じゃないような黒いオーラが見え、喜怒哀楽の感情がないような無表情と棒読みが特徴的だ。
はっきり言って偶に怖い子だ。
でも私より年下である。
「で?」
なにか用事ですかー?
と、相変わらずの棒読みで聞く千郷君に私は「見かけたから声かけたんだ」と言えば鼻で笑われた。
「ホント暇人ですね〜。アンタ」
他にやる事ないんですか?とまで言われる始末。
良くこの公園のベンチに座ってる君にだけは言われたくないよ・・・。
私は千郷君の隣に座りボーッとしてると
「ああ。そうだ京先輩」
と、声をかけられ。何?と返すと千郷君は無表情の顔をこっちに向けて
「最近、妙な穴が増えてる事知ってますか?」
ああ、ニュースとか新聞で最近話題になっている・・・。
その妙な穴は最近現れたもので、私たちの生活を少しずつ、狂わせつつあった。
最初は3ヶ月前、高根さん家の息子の翔(かける)君が悲惨な姿で発見され、その翌日には山本さんのお婆さん。それから被害が続き、二月ほど被害がなく。
その一ヶ月後にはつーちゃんのお母さんが、殺されていたという。
あ、因みにつーちゃんっていうのは山根木月咲といい、私の友達だ。
「・・・その穴が。どうしたの?」
「どうやらその穴から魔物が出てきたという情報を小耳に挟んだんですよ」
・・・・・・ん?
「魔物って・・・あの魔物?」
「はい。あの魔物です」
「嘘?」
「ホント」
「はああああああああああああああああ!!?」
叫ぶ私を煩わしそうにする千郷君は耳を手で覆っていた。
「此処に魔物!?なんで!?」
「知りませんよ。それに魔物如きで驚かないでください、子どもなんですから・・・」
君も十分に子どもだけどね・・・。
昼のチャイムが鳴り響き、千郷君は帰っていった。
私も家に帰ろうと歩き、神社に寄ると見なれたレインコートと傘が見えた。
その傘の上には雨雲がゴロゴロと雷鳴を鳴らして雨が降っている。