ケロロ2

□傘も天気も使いよう
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「んもぉ…タイミング悪いなぁ。」



ほとんどの生徒も帰宅した学校の玄関口で、夏美は暗く淀んだ空を見上げる。



シトシトと降り続ける雨。
朝の青空は一体なんだったのかと、1つ、ため息を吐いた。


弟の冬樹はもう帰っている頃だろうかと、いつも携帯を入れている鞄へ手を伸ばそうとして、止める。


「そういえば、今日に限って玄関に置いたまま来ちゃったんだっけ…。」


そう呟けば更に惨めな気持ちになり、夏美は力無く肩を落とした。


仕方なくびしょ濡れになる決意をし、一歩踏みだそうとしたその時、


「夏美ちゃん?」


それは、愛しいあの人の―…








〜傘も天気も使いよう〜









バラバラと、傘を打つ雨音。
先程より少し強く降り出したようだったが、夏美の制服に濡れた様子は無く。


むしろ、夏美自身は晴れ晴れとした気分だった。



「ありがとうございますサブロー先輩。本当に助かっちゃいました!」

「いいよ、気にしないで?」



返ってきた優しい笑顔に、夏美はたまらず顔を赤くする。


夏美を雨から守ってくれているもの…
それはサブローの傘であった。


「本当に一時はどうしようかと思ったんです。…それに、」

「それに?」

「あ、いいえ!何でもないです…!」



夏美は肩が触れそうなほどすぐ隣を歩くサブローを見つめ、とろけそうになる頬を両手で押さえた。


(サブロー先輩と相合い傘なんて、幸せ!)


ずっと憧れだったサブローと恋仲になり、初めての相合い傘に夏美が有頂天になるのも無理はない。


そして、
『実体化ペンは、今日は忘れてきたってことで』と、この相合い傘を提案したのがサブローからだったのだから、尚更である。



恋人、という関係になって早数ヶ月。
未だにこうしたこと一つ一つに喜びを感じられることが、夏美は本当に幸せだった。



「あ、そういえば…。」

「どうしたんですか?」



夏美の自宅まであと数分という距離。


それまで他愛のない会話に穏やかな笑みを浮かべていたサブローが、しまったという表情を見せた。



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