ケロロ3
□素直な気持ちで
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街を歩けばすぐに声を掛けられるほどの大人気アイドル。
頭がよくて、運動もできて、格好良くて。
いざってときには助けてくれて。
だけど僕らにはうまく理解できないところもある、不思議な人。
そんな人と姉ちゃんが付き合ってるなんて、僕はまだ信じられないような気持ちだった。
〜素直な気持ちで〜
「本当に僕も貰っちゃっていいんですか?」
「うん、冬樹くんにもって渡されたしね。」
「ありがとうございます。」
パチンとお決まりのウインク付きで差し出されたジュースをうけとる。
これはついさっき、睦実さんのファンの女の子達が半ば強引に渡していったものだ。
「またラジオでお礼言っとかないとね」
なんて睦実さんは笑うけど、
やっぱりこういう心遣いが当たり前にできるっていうのも、人気の理由なんだろうと思う。
彼女である姉ちゃんからすれば、少し不安要素なのかもしれないけど…。
「そうだ、姉ちゃんと言えば!」
「え、なに?夏美ちゃんがどうかしたの?」
突然姉ちゃんの話題を切り出した僕に、睦実さんは少しポカンとしている。
今日姉ちゃんの話題がでたのはこれが初めてなんだから、無理もないよね。
「あ、あはは…大した話じゃないんですけど。
そういえば睦実さん、来週くらいから暫く出張なんだよなぁって。」
「そうだよ。夏美ちゃんから聞いたの?」
「はい。睦実さんが帰ってきた翌日に会うんだって、ちょっとぼやいてたから。」
「――ッ!?、ゲホ、ゲホゲホッ!」
「わ、大丈夫ですか、睦実さん!?」
“ぼやいてた”って言葉を聞いた瞬間、睦実さんは飲んでいたコーラを気管に入れたらしく、盛大に咳き込んだ。
あぁ、これ苦しいんだよなぁ。
まさか睦実さんがそんなに驚くなんて思ってなかった分、少し申し訳なく思う。
「ごめん、大丈夫。
…それより、夏美ちゃんがぼやいてたってどういうこと?」
「え、あぁ。実は…。」
まだ少し苦しそうな睦実さんに尋ねられ、僕は事の経緯を説明した。
睦実さんの今回の出張は一週間くらいのものなんだけど、
帰ってくるのも夜中を過ぎるらしい。
それなのに睦実さんは、帰ってきた翌日、実際にはその日に姉ちゃんと会う約束をした。
姉ちゃん曰く、
『そりゃ私だって会いたいけど、でも誰だって一週間も出張に行ったら、帰ってきた日くらいゆっくりしたいじゃない?
もちろん睦実さんは一言もそんなこと言ってないし、そんな状態でも会ってくれるのは…嬉しいけど、なんて言うか…複雑で…。』
だそうだ。
でもさ、それを聞かされる弟からすれば、この話って…。
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