長編

□多神星アルビア《異世界を創造スキルで生き抜く》3
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砂漠の国《シャリー二》の都市プジェト


俺とピルプルはその都市から北西へと向かった

砂漠を数日かけてバイクで走り国境を越えたのだが、線で書いて区切っているのではなかろうかと思うほど国の境が目に見えてハッキリと分かった


そこには砂埃が舞う荒野も襲い来るワームの姿はない

見渡す限りの美しい若草色の草原と、なだらかな丘が遥か彼方まで広がっていた


食の国《ドマド》

都市のコバルドレッドは、裕福で安全な街としても有名なんだそうだ


国はそこそこ広く、自然豊かな土地なのに国民はたったの数百万人と人口がとても少ない

その代わり、冒険者の数が他国に比べて圧倒的に多いのだそうだ


冒険者の目的は勿論ダンジョン


D級のダンジョンは初心者のパーティーが挑むにはうってつけで、1日篭ればそこそこな額が稼げるのだと
ただし、稼ぎは夜のうちにほぼ全て使い切ってしまう冒険者がほとんどらしいが…

どんな金銭感覚してんだよ

俺はふむ…と顎に指を添える


「なるほどな
冒険者が集まる食の国…って考えで良いのか?」

「「「はい!!
仰る通りでございます!!」」」


チラりと横目で太い木に宙吊りにした盗賊達を見たら、真っ青な顔で必死に頷いていた

初心な冒険者を狩ったり、商人を襲って生計を立てているらしい髭面の野郎どもは…

さて、どうするか?

「そういや、さっきお前らなんて言ってたっけか?」

笑顔でにっこり微笑んでやると、盗賊達は小便をチビりそうなほど哀れなくらいガタガタと震え出した

「あぁ…そうだ思い出した
俺で遊んでから、何処かに売るって言ってなかったか?ん?」

近づいてそこらに落ちてた枝で、頬をグリグリと抉る

いつ風呂に入ったかも分からんくらい汚いから、素手では触りたくなかった

「「めめめっ滅相もございませんっ!!もう誰も襲いませんので助けてください!!!」」

『…と言ってますが
どうしますか、ご主人様ー?』

プルがパタパタと飛びながら、小首を傾げて聞いてきた


「なるほど、拘置所送りだ」

「ひーっ!!?」


盗賊達の顔面は、もう真っ青を通り越して真っ白に近い

『ご主人様ぁ
拘置所って何処ですかぁ?』

「あー…
どっかにあるんじゃね?
都市の外れとか」

知らんけど

『なるほどですー!』

いや、なんで今の説明で納得するんだお前達は…


「ボウズ…そこのボウズ!」

後ろから老夫婦が声をかけてきた

「はい?」

そういや2人の存在をすっかり忘れていた

くるりと振り返る

「いやー、ボウズ強いのぉ!
お陰で命拾いしたわ!」

多分奥さんなんだろうな
小柄な婆さんを背に庇いながら必死に1人で戦っていた白髪の爺さんが近づいてきて、豪快にカッカッカッと笑った

爺さんといっても、日に焼けて筋肉ついてるからナヨッとはしていない
あんな重そうな剣を使えるくらいだしな

「間に合って良かった
怪我は無いか?」

鑑定眼で見たところ出血や骨折は無いようだが、痣は出来ているかもしれない

地面に転がった果物を荷馬車の木箱に入れながら聞いた

「お陰様でどこも怪我せずにすんだわぁ
ボウヤ、ありがとうね」

小さな婆さんが俺に頭を下げ、自分を庇ってくれた旦那の無事を喜んでいた

こんな世界だからだろうか
俺が出会う人間はみな絆が強いというか…夫婦仲が大変よろしいですな


末永く爆発してくれ


「最近盗賊が出るとは聞いていたが、まさかこんな都市の近くにも出るとわのぉ
それにしても雇った若造の冒険者ども…!
盗賊を見るや否や逃げよってからに…かーっ!!」


剣を握りしめながらプルプル震えて憤慨してるじい様、こぇー!


顔を真っ赤にしてキレかけている爺さんに、まぁまぁと宥める婆さん

「ボウヤが助けてくれたから良かったじゃないの
そんなに怒ると倒れてしまうから落ち着いてくださいな」

剣を握る手に婆さんは手を添え、撫でて落ちつかせる

「そ、そうじゃな!
荷物はバラバラになってしもうたが、婆さんが無事だったから良いじゃろ!」

爺さんの怒りは何処へやら
照れながら剣を仕舞い、そのまま手を取り合い見詰め合う老夫婦


なぁ…ちょっと…

それ、俺が居ないとこでやってくれね?

独り身の俺へのイヤがらせか??


「はぁ…
お熱い事で」

パタパタと手で顔を仰ぐ仕草をする

そして独り身云々考えてたら、ふと頭の隅に何故かアイツの顔がチラついた

なんでだよ…


紺色の胴体に虹色の翼が生えた鹿の様な生物(後で聞いたらペリュトンだと教えられた)に荷台を引かせ、その荷台に俺と老夫婦が乗り、あまり整備されていない道を走っていた

都市のコバルドレッドに家があるから向かっている最中だったとかで、護衛をする代わりに一緒に乗せてもらえることなった

因みに盗賊のヤツらは木に縛り付けて【注意:盗賊 逃がすな】と書いた紙をデコに貼り付けて放置した

爺さんが後で被害届を出して捕まえに行って貰うらしい

「ペンペン!
いけいけGOGOー!!」

「ぴゅぃ〜!!」

爺さんが手網を操作し始めたので、声をかける

ペリュトンはご機嫌な様子で足取り軽やかに走り出した

「ペンペンじゃなくペトランティーノじゃ!」

それを聞いた爺さんがまたキレだす

「え、なに?
ペペロンチーノ??」

「ペトランティーノじゃ!!!」

「おっけー、ペパロニチーズな」

「ペ…!
はぁ…もうペンペンでええわい」

ペしか合っておらんじゃないかと爺さんがブツクサ呟く
そのやり取りを見て、婆さんが隣でクスクスと楽しげに笑っている


うーん
横文字って難しいな?



「ほれ、アレがコバルドレッドじゃ!」

「おぉっ!」

緑豊かな草原に、プジェトとは比べられない程に立派な真新しい城壁が聳え立っていた
城壁の周りには水路が掘られ、綺麗な水が近くの大きな川へと流れている

真っ白な外壁の上の方には所々穴が空いていて、警備兵だろうか?

門を通り過ぎる人の様子を覗き見ていた


「コバルドレッドも城郭都市なのか」

「そりゃそうじゃ!
スタンピードが来た時にあの強固な壁が無けりゃ、皆死んでしまうじゃろ?」

確かにな
て事は他の国の都市も同じなのか

通行時に俺はギルドカードを、爺さん達は別のカードを提示して通行を許可された

「それ、なんのカード?」

「なんじゃボウズ、ギルドカード持っとるのに知らんのか?
これは商人用のギルドカードじゃ
ギルドで金を払って申請、登録すれば持てるぞ
これがないと商いする事も店を開く事も出来ん」

「へぇ…?
良いこと聞いた」

それにしてもプジェトとは違い、コバルドレッドはなんていうか…



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