FEEL
□2人は狂犬
2ページ/5ページ
着替えてからシェンのご飯を持って外に出ると、ちょうど郵便配達の人がきてシェンに吠えられているところだった
「シェン!こっちに来い」
シェンは俺が出てきた事に気づくと、尻尾をぶんぶん振りながら急いでこっちにやってくる
吠えられていた配達人の人はほっとした様子で、サインを促してきた
郵便物を受け取ってサインを書いている間も、配達の人はシェンを怖がってか・・それとも目つきの悪い明らかに不良な俺を怖がってか、門から離れてこっちを見ている
「えと・・大きな犬ですね、なんていう犬種なんですか?」
郵便配達のお兄さんは、まるでお伺いをたてるように尋ねてきた。
シェンを見た人は、皆絶対一度はこう言ってくる
俺は用紙からちらりと目をあげて答える
「たぶん雑種です。拾ってきたから合ってるかわからないんだけど」
「へえ。そうなんですか〜」
これも、いつも交わされる何気ない会話
はいっと、サインを書いた紙を渡す
「どうもありがとうございます。」
ぺこりとご丁寧に頭を下げて、配達のお兄さんはバイクに跨がり去っていった
配達の人が帰ってから、シェンに餌をやって、俺は何事もなく家に入った
ただそれだけだった
よく考えれば、その日のシェンはどこかおかしかった
いつもなら、郵便配達の人が来ても門の前でじっとして、俺が家から出て来るのを待っている
もちろん、威嚇などしたりしない
そして、何もないところで唸ったり、道の前を通り過ぎていく人に向って吠えたりしているシェンに対し、俺は
「機嫌が悪いのかもしれない」
としてしか、考えていなかった