FEEL
□体育倉庫危険地帯!!
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夏らしいカラッとした朝。
外で蝉が元気に鳴く声が、夏のうだるような暑さにより一層拍車をかけている。
都会の住宅地の一軒家に住む御城 秋人(みじょう あきひと)は、寝ていたベッドからだるそうに手を差し出して、電子音が鳴り響く目覚ましをとめた。
だるさを誘うのは何も暑いからだけではない。
「ちくしょ〜。」
まさか男にキスされる日が来るなんて夢にも思っていなかった秋人である。
ってかなんでオレ!?学校の外に行けば女なんていっぱいいるのに・・・はっ!もしかして嫌がらせか!?
それも特大級の!!
一人心の中で葛藤を繰り広げながら、秋人は学校へ行くためにベッドから起き出し、半そでシャツの制服に着替える。
自分の部屋の前にある階段を下りながら、昨日のことを思い出す。
昨日の放課後に秋人は学校一の不良、長崎 修二(ながさき しゅうじ)に校舎裏の花壇の前で押し倒され、あろうことかキ、キスされてしまった。
「だーっ!!」
長崎にキスをされてほんの少し、本当に少しだけだが感じてしまい、ズボンの前を気にしながら走って帰り、自分の部屋で気を落ち着かせている時のあの惨めな思い。
今思い出しただけでも腹が立つ!
なぜあの時、秋人の前に座りながらニヤニヤ笑っている、あのキレイに整った顔に蹴りをくらわせなかったのか。
家に帰った後にそれに気づき、ムカつきを枕に向けて殴っていると、下にいる母親にうるさいと怒鳴られ、気分は今までの過去にないほど落ち込みまくった。
こんな気分を味わったのは、全部、すべて長崎のせいだーーー!!!
イライラとしたままリビングに入ると、マーガリンが塗られたトーストとヨーグルト、サラダとジュースがテーブルに乗っていた。
「秋ちゃん、早くしないと遅刻するわよ。」
オレのことを秋ちゃんと呼ぶのは母さんだけだが、この年になるとそう呼ぶのはもうやめてほしい。
オレの母さんは、近所でも評判の、のほほんとした美人奥様と呼ばれている。
自分の母親とは思えないほど、オレの母さんは若く見える。
だが見かけで判断しては決していけない。
オレが小学6年の頃、母さんが大事にしているらしい小さな花瓶を見てオレは、
何この変な筒?
と子供心で言ったら、すごい形相で怒られた。
アレはすごかった・・・。鬼神が光臨したとマジで思った。
そんな訳で、オレはその時から余計な事を言うのは止めた。
もうあんな目にはあいたくない。