短篇
□V 純愛ラストデイ
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小学生の頃、俺には好きな子がいた。
俺よりだいぶ背が低く、日に焼けてこんがりした肌の俺とは対象的に、彼は透けるような色白の肌でぱっちりとした瞳がとても可愛い大人しい子だった
子どもだった俺はその気持ちの意味にも気付かずに、最低な方法で毎日彼の気を引こうとしていた
そして、運命の日が近づいているとは露知らず、俺はいつもの仲間と一緒にその子を放課後に捕まえて虐めていた
『ほらお前これ好きだろ、やるよっ!』
生きた蛙の脚を掴み、嫌がる彼の手に無理矢理持たせた
『ぃ・・・イヤ、いらない・・・』
大きな瞳に涙をいっぱい浮かべる表情が、幼心なりにも可哀相かなと感じて止めようとするのだが、その悪ふざけに他の奴らも便乗して、次々にその子をイジメる
『貰っとけよ!』『オレらのはいらないっていうのかよ!?』と皆口々に言いながら蛙や虫などを嫌がる彼に押し付ける
自分もやっておいて今更止めろとも言えず、参加しないまま心配気に見ているしか出来なかった
仕舞いに彼は、わっと泣き出してしまった
そうなると他の奴らは慌てて、自分は何もしていないといった感じを装い、そそくさと逃げだしていく
気がつけば、その場には俺と彼の2人だけになっていた
泣きながら震える彼に近づき、そっと伸ばした手をばしっ!と凄い勢いで払われる
『ゆき君なんて・・ゆき君なんて大っ嫌い!!』
彼は、泣きながら夕暮れ時の公園を走って出ていった
その放たれた言葉に俺は猛烈に傷つきショックを受けた
そして次の日、なぜあの時引き止めて謝らなかったのかと後悔した
次の朝、どんよりとした暗い気持ちで学校に行くと、彼はアメリカへ引越していたのだった・・・
今は悪い事をしたと反省しているが、引越した彼を追う事も出来ず、住所もわからないので謝罪の手紙すら出せない
・・・まあ、もし出せて届いても読んでくれない可能性大だけど・・
あと、俺には謝る事が出来ない、もうひとつ理由がある
それは、好きでイジメていたはずのその子の名前が、俺は思い出せないのだった