短篇

□W 臆病アウトサイダー
1ページ/1ページ

【撮影場】


「今日の俺も最っ高にきまってる!イクぜーっフィーバー!!」

俺は、今もっともイケテると噂されている雲類鷲 篤(うるわし あつい)22才 独身。繊細で綺麗に整ったこの美貌をフル活用して、現在俺はモデルの仕事をしている

「…篤、うるさいぞお前。なに一人でギャーギャー言っている」

寝坊で遅刻したって、大概のカメラマンやお偉いさんは俺の美貌を見ると笑って許してくれるっていうのに…。
こいつ、属 夜春(さっか やはる)だけは俺の行動に一々口だししてくる。まるでクレームジジィのようだ。

「略してクレジジ」

「…お前、今なんて言った」

属は、スタッフから聞いた話では、イギリスと日本人のハーフらしく、目鼻立ちの彫りが深く瞳の色は清んだ湖のような碧さ。長い脚で優雅に歩くその様はまるで生きる彫刻のようだ…と前に読んだモデル雑誌に書いてあっただけあって、俺に匹敵するくらいの超売れっ子モデルだ


まあ、俺の方が格好良いけどねっ


「見ろよこの俺様のスタイル!今日も非のうちどころがねぇほど完璧だ」

「テメー無視か…人の話を聞かねーとぶっ殺すぞ」

俺は色とりどりの花が撒かれたブランド物の白いソファーの上に、ばすっと寝転ぶと背もたれに肘をついた属が般若のような顔で睨んでくる。
なんだ?俺の美貌に嫉妬してんのか?

「え、なに?まさか抱いてほしい?……ごめん、俺には愛しのハニーがいるから無理だわ〜他あたって!」

「…誰かこのポジションを変われ…」

あれ、なんか属が汚物を見るような視線を俺に向けてくる。


…そんな目を向けられたら、感じちまう…な〜んてな、あはっ♪でも俺の大事な仕事中にそのムッツリ顔のままだと、こいつが知られたくない秘密とかここで盛大に暴露したくなるなぁ…


「は〜い注目っ!アッチーもやはるんも喧嘩し な い!こっち見てちゃぁんとポーズ決めてよ〜っ」

「ほ〜い、ゴメンね千鶴ちゃん」

今日のカメラマンは、どうやら俺と気が合う仲の良い千鶴ちゃん(偽名)みたいだ。もういい年のオッサンで、仕事中にカマ喋りとド派手な服装を着ていて見た感じ怪しいが、撮影が終わったらみんなを連れて飯を奢ってくれる太っ腹な人だから俺は大好きだ

「…やはるんは止めろ、厳造」

「いやあぁぁっ!本名で呼んじゃ、メっ!」

千鶴ちゃんに本名で呼ぶ事は、踏み入れてはならない禁断の地に入るのと同じ事だ

「そうだそうだ、レデーには優しくしろよ〜やはるん!」

「何がレデーだっ、ちゃんと発音しろ!というか、奴はレディーでもなんでもない、ただのオカマだろうが!」

「んもうっオカマじゃないわよ、ゲイよっ」

「どっちも同じだ!」








 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ