□モンスターパニック
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「しかし、こんなのよく探してこれたなぁ……」
オレンジ色をしたカボチャの被り物を手にしながら、ブラック・ジャックは半ば呆れ気味に口にした
今日はハロウィン
ブラック・ジャックが持っているカボチャの被り物は、ピノコがTOMで開催されたハロウィンパーティーで使用したものだ
「普通にパーティーグッズのお店に売ってゆよのさ」
「ふーん…最近は売ってないものはないんだなぁ……」
若干年寄りめいた言葉をブラック・ジャックはポツリと呟いた
ブラック・ジャックとピノコは既に夕飯を済ませ、リビングで食後のコーヒー&紅茶を飲みながら寛いでいた
テーブルの上にはお互いのカップと、ピノコが貰ってきたお菓子が置いてある
一年に一度しか使用価値がないこのカボチャの被り物は、一体幾らしたのだろうか?とカボチャの被り物を見ながらブラック・ジャックが考えていると、ピノコは更に言葉を続けた
「カボチャの他にも色々あったんらけろ、結局そえにしたの」
「色々って?」
「魔女とか、悪魔とか、ネコのオバケもあったよのさ」
「で、結局カボチャを選んだのか」
ピノコが、数ある選択肢の中からカボチャの被り物を選んだ決め手が、ブラック・ジャックにはわからなかった
「一応、他のも買ったんよ」
「買ったって……お前、カボチャだけじゃなく、他の衣装も買ったのか?まったく、また無駄遣いして……」
「無駄遣いじゃないもんっ!」
「無駄遣いじゃなきゃなんなんだ?ハロウィンの仮装用の衣装なんか一体いつ着るんだ?」
「……らって、かわいかったんらもん」
上目使いにブラック・ジャックを見上げると、ピノコは紅茶を一口飲んだ
その仕草があまりにも愛らしく、ブラック・ジャックは思わず口元が綻びそうになるのをグッと堪えた
「 可愛いからって何でも買ってくるな」
「う〜っ…ごめんちゃい……」
素直に謝れると、流石のブラック・ジャックも許さない訳にはいかない
恋する者の弱味か、結局、ピノコには甘くなってしまうブラック・ジャックだった
「まぁ……買ってしまったものは仕方ないか……」
あまり無駄遣いするなよ、と一言添えると、ブラック・ジャックはコーヒーを口に運んだ
はい、と元気良く答えると、ピノコは何かを思いついた様に手をパチンと叩いた
「そうだっ!折角らかやファッションショーしたやいいんよっ!」
「えっ?ファッションショー?」
ピノコの突然の提案に、ブラック・ジャックは一瞬戸惑った
が、そんなことはお構い無しに、ピノコはソファーから立ち上がってブラック・ジャックにニコリと笑った
「ちょ!ハロウィンのファッションショーなのよさ♪」
そう言い残すと、ピノコはあっという間にリビングから飛び出した
「ファッションショーって……」
カボチャの被り物以外がどんな衣装なのか気になるところだったので、ピノコのファッションショーがブラック・ジャックはほんの少しだが興味があった
一体、どんな衣装を買ってきているのやら……
目の前のチョコレートを口に放り込み、ブラック・ジャックはその甘い口溶けを味わった
「お待たせいたちまちたぁ♪」
扉が開くと同時に、颯爽とピノコが現れた
「ジャーン!先生、どう?なんかわかる?」
そう言いながら、ピノコはその場でクルリと回ってみせた
ふとしたらパンツが見えてしまうくらい短い丈の黒いスリーブレスのワンピースに、お揃いの黒くて長い手袋と同じく黒くつばの広い三角帽子姿
アイテムなのかホウキを手に持っている
「魔女かい?」
「あたり〜!」
ホウキに跨がると、ピノコはアニメに出てくる魔女っ子の様なポーズをとった
「様になってゆ?」
「まぁね」
「じゃあ、次ね」
ホウキに跨がったまま、ピノコはリビングから出ていった
想像よりも普通な衣装に、安堵しながらも若干残念に思う自分に気付き、ブラック・ジャックは苦笑いをした
一体、自分は何を期待していたんだ…と
とそこへ再びピノコが勢い良く現れた
「なっ……!?」
現れたピノコの姿に、ブラック・ジャックは言葉を無くした
「ジャジャーン!今度はどう?カワイイ?」
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