物語

□Episode.1
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 その日も相変わらず雑用に追われる
まだ実力のない自分には仕方のない事だと言い聞かせ
彼女は箱いっぱいに詰まった薬品を運んでいた。

マロンブラウンの長い髪、両サイドから少しづつひろった髪を
頭の後ろで桜色のリボンが結んでいる
彼女は科学班見習いの夕月。

下手をしたら踏み付けそうな長い白衣を翻して廊下を歩くも
夕月の小さな体に、その箱は不釣り合いな程大きく
傍から見れば、箱が意志を持って歩行しているかのようだった。

あの角を曲がれば少し広めな廊下に出る、そこで一度降ろそう。
そろそろ痺れてきた腕に力を込め、角を曲がったその時…

「うわっ!」

聞き覚えのある声が耳を掠めたその直後に大きな衝撃。

「きゃぁっ!」

後は最早お約束。

「…ったた…って!すみません!大丈夫ですか!?」

ぶつかった衝撃で、箱は持ち手の方に傾き
夕月は盛大に薬品を頭から被る形になっていた。

「…あの、もしもし…?」

割れたビン、薬品が散らばる中
何が起きたのかわからぬ様子で
しばし呆然と床を眺めていた夕月だったが
心配そうに相手に顔を覗き込まれ、急激に意識を取り戻す。

白銀の髪に左の額にペンタクル。
左の頬に特徴的な傷、自分の目の前にいる人物を、夕月はよく知っていた。
途端、火がついたように赤くなったかと思えば、悲鳴のような声を上げる。

「ひゃぁぁっ!!ア…ア…アレン様っ!!す、すみません!!私っ…なんて事を…!」
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