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↓兎虎...。
(虎徹にノメりこんでる、おバカで
ちょっと変態入ってるバニー)

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「い…いつまで舐めてるんです!いい加減にしてください!」
「え"?だってよー。思ってたよか上出来だったんで、もったいねぇなぁ〜…って思って。んで」


バーナビーが頭から湯気を噴出す勢いで思いっきり咎めていたのは、
チョコクリームを泡立てた後の泡立て器を手に、行儀悪くいつまでもクリームの残りが付いたままのその先を、いじましく舌先で舐め続けているという虎徹の行為にだった。


今日はCATV向けに春から流す
"ヒーロークッキング"
とかいう変な新企画の初回SPだとかなんだとかで、2人そろって『ザッハトルテ』…
つまりはチョコレートケーキを一から作って、おまけに視聴者にプレゼントしようという妙な趣旨の番組収録だったのだ。

なんでヒーローがケーキ作り…とバーナビーは最初まったく乗り気ではなかった。
当然だろう。
やれば不得意ではない料理だが、わざわざヒーローがやって見せて、誰が楽しんで見るんだろう。

馬鹿げた番組だと当然ロイズに抗議しに行ったものの、そこで嬉しそうにすでに待っていた虎徹が、すっかり話を受けてOKしてしまった後だと聞いたらもう、抗議とか抵抗とかどうでも良くなってバーナビーはがっくりと嘆息するばかりだった。

『ヒーローだって料理する!そーいう人間性こそが、大事って趣旨だろ?』
虎徹が悟った様に言う理由に、ロイズまでが渡りに船的に黙って大きくコクコク頷いていた。

もはや、何を言っても無駄な様だ。
やるか、やらぬか。
どうせやらねばならないなら、徹底的に、だ。

パティシエ風だとか虎徹を先生風に仕立て、自らはその助手風にと、結局自ら企画まで口出ししてしまい、結局その演出で本収録となった。
…まぁ本来、そこまで大袈裟に気合をいれなくても良い番組内容だったのだが…
初めてという言葉に弱い虎徹のハイテンションが伝染してしまって結局、何だかんだ言って楽しく収録を終えたのは事実だった。

そこまでは良かった。
そこまでは。

公衆の、というかセットの撤収が始まった
慌しいスタジオの雰囲気の中とはいえ、撮影スタッフ達がまだ、遠巻きに2人を興味深そうに見ている今。

…何で、よりによってそんなエローい顔で嬉しそうに泡だて器なんかいつまでも舐めてるんですか!
貴方って人は!
止めてくださいよ!
ソッチ方面の人、この業界多いんですからね!
やるんなら、2人きりになってからにしなさい!


…などと叫びたいのを必死で赤面して抑えてるこちらの気なんてまったく眼中にないのか、(ない)虎徹はレロー、と子供めいた顔で嬉々としてクリームの残りを舐め続けている。

ついつい、無意識に喉を鳴らしながら、
バーナビーは虎徹の表情を見入ってしまっていた。

すると、それを的外れに勘違いした虎徹が、バーナビーの鼻先に、泡だて器を持ってきて、そして聞いてきた。

「バニーも、舐めるぅ?」
「…いらないですよっ。それより、早く
片付けたいんでもう止めて下さい、ソレ!」

知らず、猛然と強い口調になってしまうのは、とにかく一刻も早くその"エロ顔"を止めさせたい一心なのに。
言われた虎徹は、唇まですっ尖らせて、拗ねてむくれた小学生の様な態度を見せた。

「んだよ、せーーっかく、ケーキ作りしてた時のお前の顔つき、すんごく良くって視聴者受けしてたってのにさー。
終わった途端そうツンケンすんなってぇの。」

視聴者とかファンに向ける顔なんてどうだっていい。
そんな、ビジネスの顔はどうやったって造れるのだから。
虎徹が、真の顔を見てさえすれば、それでいい。

それをわかって欲しくて、唇に言葉を乗せる。

「別に…!僕は、他の誰かに見てほしい訳じゃなく…」

さらに言い募ろうとしたところでバーナビーには、不意に繰り出された虎徹からの攻撃で、一番聞かせたい大事な決め言葉を言い終える事ができなくなってしまった。

突如として悪戯めいた目を輝かせた虎徹が、“ほらっ”と言いながら自分の指先にそのチョコクリームを少し掬い取り、否応なしでバーナビーが抗議するために開いた口に、スポっと指ごと、突っ込んできたからだ。

「!」
"な…なんて計算ナシでヤらしいんだ、この人は!"

バーナビーが違う意味で赤面しまくっているのを、自身の思いつきが成功していると勘違いしている虎徹は、ニカ、っと笑って指を引く。

「なー?上手くできてんだろー。先生も助手も、相当腕前がいいからだよな!」

味なんて、味なんて…。
虎徹さんの指の味しか、僕にはもうわかりません!
…とは流石に、この場では叫ぶわけにはいかず、バーナビーは仕方なく同意してみる。

「え…えぇ!」
「…俺らでまた作れっかなー、コレ」

余程気に入ったのか、残り僅かなクリームを惜しそうに眺めている虎徹のその姿にバーナビーは胸が急に熱くなってしまい、
自分でも制御できず気づいたらもう、
叫んでしまっていた。

「その程度…いつでも舐めさせてあげます!」

ざわついていたスタジオが、水を打った様にシーンと静まり返った。

撤収作業をしていたすべてのスタッフの動きが完全に氷付けになった様に動かなくなったのはバーナビーの見間違いではなかった。


「あ…ありがとうねっバニー。その…今度は2人でさ、ゆっくり食いたいって思っちゃったからさ」

焦ってはいるものの、この風景の中で
固まらずに笑っているのは、バーナビーの
目の前で物凄く赤面している虎徹だけだった。


あぁ、チョコレートの味ってこんなにも
甘いものだったんだ。


バーナビーは、今まで好きでも何でもなかったその味が持つ真実の効力を意味を、急にすべて、何もかも理解し獲ていた。
じわりと口中へと広がっていく甘さは、
あまりに魅惑的に心を惑わせる。

原初の人類がすべてを理解し楽園を
追われる原因になった味がただの果実であるというのなら、これは。
一人で口にした今までは感じなかった
この甘やかさと薫りは。

歓楽に繋がる蜜のかぐわしさは
求めた者だけに示される、墜ちて行く味、そして堕とす味。

「いつでも、いくらでも2人でね。確かに“せっかく”ですからこの味…もうちょっと覚えておきましょうか。さぁ」
「え…ちょ、バニーちゃ…」

バーナビーは、脇に除けておいたボールに残っていたクリームを指にたっぷり掬い取り、動揺している虎徹の唇に塗りつけてやった。

「ほら……ちゃんと舐めて。上手に」
「んー!そん…なに、全部とか…無理……っ」

虎徹の唇に這わせていた指を、歯列をこじ開けてクリームごと、虎徹の逃げ惑う小さな舌に絡めて遊べば。

固まったままこちらをずっと凝視していたスタッフたちが、今度は手にした器材や設備を次々に手から取り落として、ガシャンドシャンとハデにうるさい音がいっせいにスタジオ中に響き渡った。
エロティックな遊びに翻弄される虎徹の紅潮した表情、それに気を奪われた周囲をバーナビーは自慢げにフフンと嘲笑い、そしてこんな罪深い悪戯を仕掛けてきた愛しい相棒を軽く罰するために、更に空いた指先でクリームを掬い取って、虎徹の目の前に
突き出した。

「ちゃんと2人で覚えきるまで、このままですからね」
「んうぅ…れもっ!…バニーひゃん〜」

口中に残る甘だるい味と、涙目になって恥じ入る様子の愛しい人の前では、どんな激しい騒音でさえもバーナビーには、どうでもいいどこか遠くの音でしかない。



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end.
2012.03.12

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