真夏の昼の夢 〜ある日の訓練後のピクニック〜 「くあ〜〜〜〜! もう限界」 『うるさいアヒルの子』もかくやというような声に、メリーウェザーも呆れる。 「なんなんだ、その声は。鶏の首絞めた鳴き声のがまだマシだぞ」 「うわー、……師匠ってば人でなし。ニワトリの首絞めるなんて」 「やってるのは私ではない。だが、そのお陰で肉が食べれるのだ。鶏に感謝しろ」 「そっかー。ニワトリさんありがとー」 半ば 今日も今日とて、剣稽古の合間にはワケの分からない不毛な会話が繰り広げられていた。 場所は、ユトゥルナ国の荘厳なお城。会話をするのは という言葉だけ見れば、実に可憐な組み合わせなのに、内容は残念すぎるほど残念だ。 なんでニワトリなんだよ! と、誰かにツッコミを入れてほしい。 王女の、ちょっとヘタレな某婚約者などは、ついていけない 剣の講師を務めるメリーウェザーは、ふとある気配を感じた。そして、剣を収めながら言う。 「――おい、今日の訓練は終いだ」 「え? もう?」 まだ日の高い時刻なのに。 「午後から早速お妃レッスンでもするの?」 「いや、今日はいい。たまには休め」 おまえにはもっと大事なこともある、と言ったのは、風に掻き消されてよく聞き取れなかった。 次の瞬間、メリーウェザーは既に消えていた。 「なんなのかしら……?」 お昼ご飯も食べていないというのに。 (そういえば、お腹空いたかも……?) 集中力が途切れた途端、空腹感が胃を襲った。 |
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