長編
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「月森、あとで教官室へ来なさい。」
『…はぁーい。』
「また、なのか?」
『うん…そうみたいだね。』
「化身を出して下さい。」
「化身を出しなさい。」
「いいかげん…化身を出しなさい。」
はじめに教官に化身を出しなさい、と言われて何日たっただろうか。
あれから毎日練習の前後に呼び出されては化身を出せ、と言われる日々。もう一週間はたつかな。
さすがに化身が出せるという事は認めた。だって僕が化身だしている所の写真を見せられたら…ね。(ってかなんでそんな写真があるんだ?)
そして今日の朝練の前後も呼び出しされて、お昼練習前も呼び出しされた…ってことで冒頭にいたる。
僕が呼び出される度に心配してくれるチームのみんなには本当に感謝でいっぱい。
「七星、また今日も呼び出し?今日は俺も行こうか?」
『カイ…いつもありがと。
でも僕は平気だし、ただ教官と話しするだけだからさ。そんな心配するなって!』
「でも…。今日でもう何日目?朝も呼ばれてたし…なにを話してるの?」
『それは、秘密だよ。いつかわかるからそれまで待ってて!』
んじゃ、行ってくるね、とチームのメンバーに笑顔で答え教官室に入る。
『失礼します。』
「…月森、君にはガッカリしたよ。まさか教官の命令に背くとは、な。」
『…化身の事ですか。』
「我々は化身を研究してあるプロジェクトを実行しなければならないのだ。そのために君の化身が必要なのに君はその命令に無視した。」
『…化身はすごい体力を使うんです。練習中に出したら僕の体力が持ちません。』
「その言い訳は朝聞いたぞ。だから朝の練習をストレッチオンリーにしたと、朝練後も言ったはずだ。」
『…忘れていました。』
「…そうか。では今回の練習では出せるな?」
チっ…
教官に気づかれないように小さく舌打ちをする。
そう、今日の朝練はずっとストレッチけど…僕は化身を出さなかった。
化身は僕たちの秘密兵器だから。
それに化身の存在がばれてしまったらここはきっと化身を出させるための特訓を始めるはず…
ただでさえきついのに…
そんな事は…させられない!
『…………。』
「だんまりか。
…私たちはこれ以上君を待つことは出来ない。大きなプロジェクトが動きはじめているのでな。」
『新しい…プロジェクト…?』
「そのために君には化身を出してもらわなければならない。…そこで少々荒い手口を使う事にした。…安心したまえ、手を出されるのは君ではない。」
どういうことだ…?
僕に手を出さずに僕に化身を出させる…。
考えろ、考えろ。
僕が教官の立場だったら…?
「おや、もうこんな時間。君以外のAチームは練習を始めて…『っ、まさか!彼らは関係ないはずだ!何故手をだした!』おや、なんの事でしょうかね?」
…ありえない!
教官のニヤリとした顔に虫唾が走る。
僕はなにも言わずに教官室を飛び出してフィールドにむかった。
『白竜!京介!カイ!みんな!』
「ゔ…うぅ…」
「っは…」
「…はぁ、はぁ、くそ…!」
…フィールドには僕の大切な仲間が倒れていた。