短編☆

□チビっ子の特権
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走って走って走った。
夢中になって走ってたらいつのまにか河川敷にいて。

その日は練習に行かずそのままサボってしまった。



あ、鞄…。
取りにいかなくちゃ…。


本当は戻りたくない。

いまの時間だと部活が終わっていて南沢先輩と会ってしまうから。

そして…理恵先輩と一緒に帰っているかもしれないから。



『少し…サッカーして…戻ろう。』


河川敷にいた子供達と一緒にサッカーして時間を潰し
子供達が帰る時間に合わせて学校に戻る。


校門まで来たとき足をかけられて転びそうになった。


「…遅い。何時間待たせればいいんだよ…。」


みな…み さわ…先輩?

…どうして?



「…ほらよ。帰るぞ。」

と鞄を投げられ腕を引っ張られる。


『ちょっ…!!南沢先輩っ!
南沢先輩ってば!』


どうして?
どうして南沢先輩は私を待っていたの?
理恵先輩は?




『離して…下さいっ!!』




私は南沢先輩を振り払った。


『どうして…。どうして私を待ってたんですかっ!理恵先輩は?』


私の目から涙が流れる。


南沢先輩は私に近づき涙をぬぐってくれた。



「…わかんねぇのかよ。

俺は…


俺は仁美の事が好きなんだよっ!!」



は…?


『この期に及んで南沢先輩は嘘をつくんで「嘘じゃない。」


嘘じゃないんだ。


と力強く言って私を抱きしめる南沢先輩。


「お前の事が好きだ。
そうやってすぐに感情が出てしまう所も。
女だから、小さいからって誰にも負けないように努力してるお前も。

全部…好きだ。」



優しく、はっきりと囁く。


私は小さいため南沢先輩の胸のなかにすっぽりと収まっている。


こんな事がおこるなら…
小さいのも悪くない…かな。



「いいか?お前は俺に惚れられたんだ。ずっと一緒にいてもらうぞ?」

私は南沢先輩の胸のなかで頷いた。


コンプレックスが大好きになった。



(お前が小さくて本当によかったよ。)
(え?どうしてですか?)
(お前が大きかったら…キスする時いろいろと…な?)
(////!!な、じゃないですよ!
全く…なに考えてんだか。)
([…かわいい])

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