短編☆
□君だけ
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『きょーすけっ!』
「…なんだよ。」
『えへへ…呼んだだけっ!』
そういって俺の腕に自分の腕を絡ませてくる仁美。
仁美とは小さい頃からずっと一緒だった。
遊ぶのも、勉強するのも、もちろんサッカーをするのも。
簡単に言えば幼馴染ってやつで。
俺たちがこうして付き合ってるのも自然な流れだ。
どっちかが告白したのではなく、自然な流れで。
お互いがお互いを好きなのだから仕方ない事なのだ。
ずっと昔に仁美から『私達、付き合ってるんだよね?』と聞かれたときも普通に頷けた。
サッカー部内でも有名な俺たちである。
『あのさ〜、私プレイヤーに戻りたいなー…なんて。』
「…急にどうしたんだ。マネージャーをやめてサッカーがやりたくなったのか?」
『あ…うん。そんな所かな。マネージャーも楽しいんだけどやっぱり実際に練習とか、試合とかしたほうが楽しいから…』
「?いいんじゃねぇの。俺たちとサッカーやってたんだから実力はあるわけだし。」
『本当っ?じゃあ明日からプレイヤーに戻るっ!』
そうと決まれば特訓だ!
といい、河川敷のほうへ走りだす仁美。
「そんなに焦らなくても河川敷は逃げねぇーつの。」
『きょーすけー!はーやーくー!』
「仕方ねぇ…。付き合ってやるか。」
『つ、疲れたぁ〜。』
「まだそんな実力があるとはな…さすがだな。正直驚いたぜ。」
実際仁美の実力はすごくていまの雷門のレギュラーも夢ではないと思う。
『まだまだ天馬には…追いつけないか…。』
かすかに聞こえた仁美の声。
なんで…松風?
『私、もっともっと練習しなきゃ!プレイヤーに戻るわけだから絶対レギュラーとってやる!』
そしてその日の仁美の練習は終わり、次の日から本格的にプレイヤーとして練習をはじめた。
円堂監督は仁美にも容赦なく厳しいメニューを与える。
しかし、仁美もちゃんとついてきていて、いつか一緒に試合に出れるかもな、と密かに楽しみにしてる俺がいた。
「仁美、帰るぞ。」
『あ、ごめん。京介、先帰ってて。私、河川敷で練習するから』
「今からか?」
『うん、私は天馬を抜かなきゃいけないから。』
そういってユニフォームのまま河川敷にむかう仁美。
…また松風かよ。
若干イラつきながら俺は更衣室にむかった。