Present for.....
□お前には負けねぇ!
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「今日のメニューは終了だ!全員集合!」
牙山教官の号令で練習してた奴らはピタッと動きを止め、すぐに集まる。
「よし。明日は新しいシードが練習に参加する。ライバルが増えるということだ。全員覚悟しておくように。以上、夕食は一時間後だ。解散!」
「なぁ〜白竜。新しいシードについてどう思う?」
夕食中、青銅に聞かれた。
新しいシード…
正直、興味はない。
究極に近い存在は俺以外にいるはずはないのだから。
青銅にそう言うとお前らしいな、と笑っていた。
俺が1番だ。
この時は本当にそう思っていた。
あの2人に出会うまでは…
夕食を食べ、日課のランニングをしていると海の砂浜で誰かがサッカーしている姿が見えた。
華麗なドリブルにトラップ。
……うまい。
その正体が気になったのでランニングをやめて海へいく。
するとそこにいたのは細身で艶やかな黒髪を高い位置でポニーテールにした少女だった。
「女…?」
『ひゃぁぁぁぁあ!だ、だ、誰かそこにいるのですか?』
その少女は少々大袈裟に後ろに転け、顔を見ると綺麗な銀色の瞳と目が合う。
なんでだろうか。
とっても惹きつけられる。
「驚かせてすまん。俺は白竜。…お前は誰だ?」
すると少女はポニーテールを外した。さらり、と音がするくらい綺麗な髪が少女の細身の体を覆う。
そして赤面しながらゆっくりと話していく。
『わ、わ、私は穂と申します。その…明日からここで練習シードとして練習する予定で…。シードとしてまだ新人で…初めてここでフィフスセクターの練習するんです…。』
「そうなのか。…お前のプレー、綺麗だな。」
本気でそう思った。
だから素直に褒めただけなのに。
『な、な、なななな〜!あああありがちょうごじゃります////』
なぜか真っ赤になって噛み噛みだった。
その時に突風が吹いて近くにあった鉄骨が後ろから倒れてきた。
まずい、反応しきれない!
『危ないっ!えいっ!』
するとなにを思ったか穂が俺に向かって突撃してきた。
俺は間一髪セーフ、穂は右足を若干捻ったようだった。
しかし、この体制は穂が俺を押し倒している状態で顔が近い。
『白竜くん!?大丈夫?急に突撃してごめんなさい。ボールを蹴れば良かったんですけど…パニックになってて思いつきませんでした…。本当にごめんなさい!白竜くんは怪我してませんか?』
俺が助けられたのになぜか穂は俺に謝って来る。
こいつ。めちゃくちゃいい奴だな…自分の事より他人の事を大事にして。
今日、しかもさっき会ったばかりの俺にもこんなに優しくしてくれるなんて。
やべぇな、惚れたかも。
「助けてくれてありがとな。ってか…顔、近くねぇか?」
と穂に言うとやっと自分の状態がわかったらしく急に真っ赤になって俺の上に倒れてきた。
「お、おい!大丈夫か?」
穂を揺すってみたが反応がない。…気絶している。
もしかして…男の免疫がないのか?
改めて顔を見ると整った顔立ちしてる。穂を抱えるととっても軽かった。
「変わったやつだ…。なぜだかほっとけなくなる」
そして急いで医務室へむかった。
「うーん。多分、疲れと驚きが混ざっているので、これは朝まで目が覚めないでしょうな。足のほうはすぐに腫れが引くと思われます。明日は普通に走れるでしょう。」
「そうですか。ではこいつの事よろしくお願いします。俺は牙山教官の所に報告にいきます。…こいつ、多分明日来る予定のシードですから。」
俺がそういうと医者はうむ、頷いた。
頷いたのを確認して俺は医務室のドアに手をかけた。
そして牙山教官の部屋へ。
すべてを報告すると教官は満足げに笑った。
「ほぉ、穂は先にゴッドエデンに来たのか。あいつはまだまだ新人だからな…。白竜、明日の練習を楽しみにしとけ。あと1人お前が興味を持ちそうな奴がいるから」
はい、と適当に返事をし牙山教官の言葉を考える。
あと1人、この俺が興味を引く奴が来る…?
「ふ、楽しみだな…。はははっ!」
自然に笑みがこぼれる。
そして急いで部屋に戻り、すぐに眠った。
次の朝、起きてすぐ穂がいる医務室に行くともう穂の姿はなくて、置き手紙があった。
白竜くんへ。
昨日はありがとう。迷惑かけてすみません。足はバッチリです。
牙山教官という方から指示があったので医務室を離れました。直接御礼が言えなくて本当にごめんなさい。では、また練習で。
p.s. この手紙を読んでいる…って事は白竜くんは私を心配して医務室に来てくれた…って事ですよね?ありがとう。
と綺麗な字で書かれてあった。
…やっぱりあいつはいい奴だ…!優しくて、思いやりがあって…とてもシードとは思えんな。
大丈夫、という事がわかって安心した。
そしてそのまま朝食に行く。
そしてすぐに穂を見つける。今日はサラサラとした髪を下ろしていてとっても可愛い。
新しいシードのなかに女はいなかった。
(多分…いや絶対)男に免疫が無い穂はどうしていいかわからずオロオロしている。
そんな所も可愛くて。
「…白竜。お前なんでニヤついてるんだ?なんか…正直キモイぞ。」
「…え?青銅。おれそんなにニヤついてたか?」
「うん、相当。そりゃキモイぐらい。」
そうだろうか…。
そうこうしてるうちに穂は青いポニーテール?の髪型のやつに話しかけられていて赤面していた。
なぬっ!あいつ…!
「ちょっ…!青銅、俺ちょっと言ってくる。」
「まさか白竜っ…へぇ〜」
そんな青銅の声が聞こえた気がするが無視してとにかく穂の所に行く。