仮面ライダーディケイドReturn


15 VS太陽!!
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「――ぁああああッ!」
 目先にいる相手に向けて、人間の力を優に凌駕する、ディケイドの拳が突き出される。狙いはもちろん顔面だ。ヒトの約四十倍の視細胞を誇る緑の複眼で捉えているので、それを外すことはまずない。
 だが拳は届かなかった。いや、相手に触れることには触れた、もとい先に触れさせられた。カブトの腕によって拳をさばかれ、上手くかわされてしまったのだ。敵ながら見事としか言いようのない、まるで無駄のない防御法である。
 とはいえ、こんなことで怯みはしない。すかさず、かつ連続で拳を、時に蹴りを織り交ぜながら、様々な角度からねじ込むように攻撃を仕かけていく。
 しかしカブトはそれをも容易に防いだ。僅かに体をずらし、腕を用いた無駄のない防御、そして上半身に纏う重装甲を活かし、ディケイドをいなしていく。彼がいくら攻めの手を加速させようと、結果はまるで変わらなかった。
「どうした? やはり太陽に辿り着く前に、墜落するのか?」
「ほざくなッ!」
 ついには腰のライドブッカーにまで手を伸ばす。瞬時にソードモードに切り替え、逆袈裟がけに薙ぎ払った。
 しかしカブトは、軽いバックステップでそれすらも回避。少し広めの感覚で、彼との間合いを取る。
「俺はお前に勝つ。勝つまで堕ちるつもりはない。それに――」
 言いながら、ディケイドは手に持っていた剣を更に組み替え、銃状へと変形させた。
 そしてその手には、彼の主色と同色の枠をした一枚のカードが――
「たとえ辿り着かずとも、やり合う方法ならいくらでもある」
『ATTACKRIDE BLAST』
「こんな風になァッ!」
 刹那、彼の銃がカブトに向かって火を噴いた。マゼンタに輝く銃弾は散弾銃のように拡散し、カブトの銀の装甲に次々と被弾する。
 これにはさしものカブトもかすかに身じろいだ。本当にちょっとしたものではあるが、そこには明らかに先程まではなかった攻め入る隙が、いくつか顔を覗かせている。まるで、その一部分だけ光も熱も弱い、太陽黒点のように――
「隙だらけだ!」
 ディケイドはすぐさまライドブッカーを剣状へと組み戻し、接近するやそれを振るう。
 結果だけを言えば、カブトにはそれをも避けられた。だがディケイドには先程とは異なる、手応えのようなものを感じた。確かに攻撃を避けられはしたものの、その避け方にはさっきまでの満ち溢れるような余裕が見当たらなかったのだ。かろうじて避けていると考えて、おそらく間違いない。
 ディケイドはこれを攻めの好機だと受け取り、カブトに余裕を取り戻させるものかと攻めの手を一気に加速させた。ライドブッカーを縦横無尽に振るっていく。
 だが、ペースを握った、と気を許したのが間違いだった。攻めのペースを握ったことについ気が緩み、剣戟は精彩さを欠いてしまっていたのだ。……カブトはそれを見逃さなかった。
 すぐにディケイドの剣、その刃の無い部分を見抜き、そこを上手くぶ厚い装甲で包まれた腕を使って受け止め、華麗な当て身投げで切り返してしまう。ディケイドの体は宙で一度回り、背中から地面に叩きつけられた。
「がはっ!?」
 背中に走る衝撃に耐えきれず、肺から空気が逃げ出す。だが無様に悶えている暇などない、彼は本能のまま、手に持った剣を思わず突き出した。それは幸にも、迫るカブトの首元僅か数センチのところに収まり、彼の追い打ちを防ぐこととなった。
「ほぉ。少しは丈夫な翼を持っている、といったところか」
 横たわった状態からの強引な反撃、その行為にカブトが静かに感心の声を発する。
 対し、ディケイドは肩で呼吸を整えながら、当たり前だと言わんばかりに、彼の言葉をハッと鼻で笑った。
「言ったはずだ、俺はお前に勝つまで墜落する気はないってなァ」
 息苦しさを堪え、喋りながらディケイドは体を起こしていく。もちろんカブトから攻め込まれないよう、ライドブッカーは突きつけたままだ。
 そしてカブトの――天道総司の強さについて考え直す必要があると理解した。さすがに太陽を自称するだけはある。全てにおいて高い実力を誇り、正に完璧に近いと言っていい。普段、怪人を相手にするのとは訳が違う。同様に考えていようものなら、彼には決して勝てない。
 彼を倒そうものなら、それこそ太陽を破壊するつもりで挑まねばならないだろう。気が緩めば、一瞬にして敗北へと追い込まれる。空を飛ぶことに浮かれるあまり、太陽に近づきすぎてしまい、翼を失って墜落したイカロスのように。あまり思いたくはないが、先程は間違いなく運が良かった。
 しかし、宣言したように負けるつもりはディケイドにはなかった。冷静に、この後どのように攻め立てるか、その算段を頭の中で組み立てる。天道に対する負けたくないという思いや妬み、もはやそんな感情は、今の彼には邪魔なだけだ。
 冷めた頭で考えを纏め、一つの策が浮かぶなり、彼は剣を元の本型に戻して両手を払う。まるで、「ここからが本番、戦いの第二幕だ」とでもいうかのように……。
「もう油断も妥協もしねえ。今から見せてやる。ディケイドの真の力ってやつを!」
 言って、彼は一枚のカードをライドブッカーから取り出し、カブトにも見えるよう提示する。
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