ミントン通信

□風の隙間
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「副長ぉ〜!」
山崎退は鬼の副長こと土方十四郎に頼まれていた書類を持って、副長室を訪れていた。
期限は明日まで。
しかし思ったよりも早く仕事が片付いたのと、少しでも遅れるとボコボコにされるのは目に見えてる。早い分には問題はあるまい。
ところが、声をかけた副長室から返事がなかった。
そっとフスマを開けると、そこには誰もいない。
確か副長の今日のスケジュールとしては、会議は終了しているし、市中見回りの番でもない。
こういう日は部屋で書類を片付けているのが常なのだが、見当たらなかった。
首をかしげつつ、屯所内の思い当たる部屋、会議室、書物室、局長室、剣技場をひととおり探してみたが、しかし姿は見えなかった。
こう言っては難だが、山崎が土方の居場所を見失う事など、本当に珍しい。
監察ではあるが、特に副長直属の監察方とあり、土方の考えや行動などは大体察しが付く。だから、普段酷い目に合おうとも耐えられるのである。
(それとも、やっぱり外にでたのか……今日は旦那の所には行かないはずだけど……)
たまに土方は休みの前日の夜などは、万事屋に行くことがあるが、明日はまだ仕事だし、たまった書類を放置したまま出る人ではない。
(もういいかな……コレ副長室置いて帰ろうかな)
本当はその書類に関して補足の説明をつけたかったのだが、置いといて、質問があれば聞いて下さいというメモでもつけて置こう。元々期限は明日だし。
そう考えながら、長い廊下を歩いていると、前方からあくびをしながら沖田総悟が歩いてきた。
「あ、お疲れ様です。沖田隊長」
「ああ山崎お疲れぇ」
「あの、副長見掛けませんでしたか?」
「土方さん?……えっと」
総悟はアゴに手を当てて考えている。
「確かさっきまで忙しそうに会議のなんかをまとめてて、あまりにいそがしそうだったから、手伝ってたんだけど、酷い人で邪魔するなって追い出されちまったなぁ」
手伝って、と言っているが明らかに邪魔していたのが見え見えである。
総悟にもわからないなら完全にお手上げである。
「そうですか……すいません。ありがとうございました」
山崎は一礼すると、総悟と分かれた。
コレはくやしいが本格的にわからないので、書類を置いて帰ろうと再び副長室へ向かった。
かるくノックし声をかけたが、相変わらず返事は無く、やはりものけのからだった。
しかし、仕事途中なのか、様々な本や資料、そして同じように山のようなタバコの吸い殻が置いてあった。
とりあえず目立つ所に書類を置いて置こうとしてふと机の上に目をけた。
すると、なにかが山崎の頭の中にひらめいた。
(……もしかして……)



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