ミントン通信

□スイートチョコレート
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(……ついに……ついに来てしまった……)
山崎は現在、万事屋の前に立っている。
その手には大きな包みを持って。
(あああっ……本当に来ちゃったよ、俺)
2月14日。
今日は朝から隊士達にチョコを配ってまわった。
今年のチョコも好評で、みんなから喜ばれて一安心である。
総悟には、また黒い笑顔を向けられたが、特にこれと言って追及はされなかった。
その後、一日仕事を終えてから、やっと来たのですっかりと日が暮れてしまった。
(……どう思うかな……)
とりあえず渡してさっさと帰ろう。
山崎は決意すると、意を決してチャイムを押した。
名前を呼ぼうとした瞬間、中をすごい勢いでドタドタ走って来る音が聞こえたと思ったら、そのままの勢いで、玄関の戸が開いた。
「あ……旦那?」
「やっとっ!やっと来たかっ!」
「えっ……?」
何やら家主は山崎の顔を見るなり、安堵したようである。
「だん……っ!」
山崎が声をかけようとしたら、いきなり腕をつかまれ、玄関へと引っ張り込まれた。
「わっ!」
「間違えないな、本物の退だっ!」
言うなり山崎をキツく抱きしめる。
「うわっ!」
山崎はケーキがつぶれないように、荷物を持った右手をあわててずらす。
「……銀時さんっ……」
旦那事、坂田銀時はなぜにこんなに必死なのか。
「ちょっと……苦しいんですけど……」
山崎が小さく声を出すと、ようやく銀時が離れた。
「いや〜悪ぃ悪ぃ。とりあえず上がってけよ」
「あ、はい。おじゃまします」
山崎はきちんと靴をそろえて上がった所でふと我に帰った。
(あ、ちょっと渡して帰ろうとしてたんだっけ……ま、いっか……)
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