ユウくん(仮)
□六話
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―――で、はっきりくっきり放課後。
やっと開いた屋上に一人腰を下ろす。
空はキレーやけど、思いがけず発覚した事実のせいで気分は最悪や。(前回参照)
まだ頭がモヤモヤしとる。
ちゅーーーーっ
俺は、新製品の「いちごとばななで五分五分ジュース」というやたら怪しい飲み物を購買で買って飲んでいた。
味?そんな事聞かんでくれ。気分が悪なるだけや。
*ユウくん(仮)*
「…相変わらず物好きねえ」
ふと、右後ろから声がした。
ゆっくりと振り返ると奴も紙パックのジュースを飲んでいた。
品名は「いちごばななぶどうで9割9分9厘ジュース」。
……もっと気持ち悪いやないか!
それをめっちゃおいしそうに飲んでるからヤバイ。
というかむしろ後1厘何が入っとるんや?
「あ〜おいしかった」
「そらよかったな」
…ええい、奴のペースに乗せられてたまるか。
いくら良い面が垣間見えたとして、コイツはまごうことなき変態なんや。
俺の態度が厳しくなるのも仕方がない。
「ユウくん、今すっごく飲みたいと思ったでしょ」
「すっごく飲みたくないの間違いやな」
「そう、飲みたいんか…そんなユウくんの為に、ほらっ」
奴は懐から、やっぱりお約束の黒いブツを取り出した。
しかし今回は間違いやないらしく、そのまま構える。
カチリ…
何かヤバイ音がした。
「おーーぃ…?」
本気か?
本気と書いてマジと読むくらい?
ヤバイってヤバイって。
奴の目は本気や。
「B・A・N・G、BANG!!」
器用に文字を体で表現しながら引き金を引く、奴。
飛び出してきた物を避けようと俺は後ろへジャンプした。
…ため背後の壁に頭をぶつけ、前のめりに倒れてしまった。
ガンという鈍い音。ズキズキと頭が痛い…
俯せの状態から上を見上げると満面の笑みの奴が。
…屈辱や…
こんな屈辱感は例えプールの授業が終わりシャワーを浴びた後再びプールに入れられてもここまで感じへんはずや(長)
「いや〜、これ実は水鉄砲なのよ。中は水じゃないけど」
…どうせそんなこったろうと思ったわ。
俺は目をつぶって起きようとした。
ピシュッ
……顔にかけられた。
しかも変な味がする…不味い…
いちごとばなな〜に567428乗したくらいヤバイ。
わかりにくい?とにかく不味いってこと…
「特製ジュース。お気に召したかしら?」
いや、全然。
むしろお前を天に召したくなった。
「何よ、さっきから黙っちゃって。ユウくんもこれ使いたいの?」
俺はその水鉄砲をひったくって奴の顔に5発くらいかけてやった。
これでいつもみたいにすっとするはずやった。が。
奴はおいしそうに自分の顔を舐めだした。
………
………コイツ…。
「…ホンマに…」
俺はへろへろな声で呟いて、その場にへたり込んだ。
「お前とは、やってられへんわ…」
しきりに自分の顔をベロベロ舐める奴を仰ぎながら。
夕日に染まりはじめた屋上に、俺の力ない突っ込みが溶けていった…
…もう、何もかもがお約束なんやろか。
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