短編小説

□拍手ログ
2ページ/25ページ

*何よりも甘い




「……何よりも甘いものあげる」


あいつがちょこっと頬を紅くして上目遣いでオレに言った。


んなこと言われたら……期待しちゃうじゃないか。


「目、閉じてくれる?」


そう言われて、オレは黙って目を閉じた。


しばらく待っていると、何か柔らかいものが一瞬唇に触れて……。


「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ甘ッ!!!?」


口の中に広がる、ただ甘いだけの……不自然で濃厚な甘さ。


こ、この甘さはもう甘いと言っていいのか……。


当社比200倍の驚きの甘さ……ドラゴ○ボールも吃驚だ。


「だから言ったでしょ?何よりも甘いものあげるって」


あいつはニッコリ……というか悪戯が成功した後の悪ガキのような表情をしていた。


「な、なんですかコレは?」

「よくぞ、訊いてくれました。世界一甘い物質です」


相変わらず笑顔なあいつ……。


「こういう場面ってさ、こう、何よりも甘いって……あっちの方想像するじゃん?」


キスと言うのが恥ずかしかったので、何となく誤摩化してオレは言った。


情けない……。


しかし相変わらずあいつはニッコリ。


「だって、でなきゃオチがないじゃん?」


「別にオレは笑い求めてネェよ!!!」


嗚呼、我が人生にシリアスという言葉はなし。
ちゃんちゃん。

次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ