リク小説
□王様ゲーム・改
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「…ヒマやなぁ」
その時、忍足の一言で全員の肩がピクリと動いたのが見えた。
「…確かに」
「うんうん、暇だCー」
「一発芸でもしろよ宍戸」
「…彼は芸人ではないでしょう」
俺たちは、部室でまったりとしていた。
…嫌な予感がする。
忍足の出す提案に従うとロクなことがない。
関西のノリを平気で都会に持ち出してくるからな。
そりゃわかってる。
わかってんだけど…
「せや。えっと…ああ、あったわ」
そう言って忍足がロッカーから取り出したのは…割り箸。
ご丁寧に人数分そろっている。
「賭けでもすんのかよ?」
岳人が半ばニヤつきながら呟く。
「…俺は反対ですよ」
「心配すんなって。…金は使わへん」
眉間にシワを寄せる日吉にそう言いながら、忍足はその内の一本に赤ペンで色を付けた。
「よっしゃ、やるで。『王様ゲーム・改』や」
「何ですか、それ?」
「大体のルールは王様ゲームと同じなんやけどな…」
そこで忍足は淡々と説明し初めた。
要約すると…
まず、王様ゲームは知ってるよな。
クジを引いて当たったら好きな人間に命令できるってヤツ。
人数制限も無い。
で、今回のゲーム、『改』なところは以下の通り↓
・まず、全員が一枚ずつ命令を紙に書く。紙は裏返して中央に集める。
・次に、当てられた奴はその中から適当に一枚紙を引く。
・番号でなく人物を直接指名
つまり、どんな命令が来るかわからないってのが狙い…らしい。
「最後に。命令を遂行できなかったらバツゲームとして、レギュラー落ちを掛ける…どや?」
燃えるやろ?と忍足はきっぱり言った…なぜか俺をまっすぐ見ながら。
…頭痛がしてきた。
*******
「絶対に紙見たらアカンで」
静かな部屋の中でペンの筆圧の音だけが響く。
「じゃ、クジ引くで…」
皆一斉に目を走らせる。
そんな折、忍足がニヤリと笑った。
「…当たりや。跡部、日吉、カード引き」
…助かった…のか?
日吉
「職員室に爆竹を投げ込む」
「何ですかこれ…」
「おっ、俺が書いたやつだ。ほらよ、爆竹」
「…向日さん…」
十分後。
俺は生まれて初めて必死になって走ってくる日吉の顔を見ることになった。
…そうだ。
跡部のカードは何だったんだ?
……こ、これは!
跡部
「右となりの人とディープキス」
…!?
『右となりの人と』
「右」となりの人…って俺じゃねえか!!
そんなのありかよ…
「うわ、マジか」
「俺だって…」
「早くしろよー」
「キース、キース」
「………悪ぃな、宍戸っ!!」
ぶちゅっ。
「んぐぐーーーっ!!」
……終わった……
俺の青春が…
俺のファーストキスが…
「ペッ!よし、続行!!」
跡部が口元を拭いながら叫ぶ。
俺も吐きそうなくらい気持ち悪い。
…畜生!
もっとどぎつい内容で仕返ししなきゃ気がすまねぇぞ!!
…それにしても、何て嫌な盛り上がり方をするゲームなんだ。
皆にやにやしながら手紙を書いている。
…ふと思った。その命令が自分に誤爆したらどうすんだ?
「せーのっ!」
クジが引かれる。
「ぁ…俺だ」
ジロー…