リク小説

□王様ゲーム・改
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「ん〜…じゃ、岳人にしよっかな」


「げ、まじ?」





岳人が思いきり顔をしかめる。

カードが引かれた。




岳人
「コンビニでゆで卵を温めてもらう」






暗転。





「バ…バッッカじゃねえの!?爆発すんじゃんか!!」





騒ぐ岳人の声も、もうもはや他人事。

皆が目をそらしている。





「…くそくそッお前ら怨むぞ!!」





…数十分後。




岳人がどろどろの黄身塗れになって帰ってきた。





「畜生!!二度とあの店行けねえよ…チーズから揚げあそこにしか売ってねぇのにぃぃぃ!!」





そう言って、乱暴に椅子に腰掛ける。





「よーし、次!!」





脂汗が出てきた。



つらい。


つらすぎる。


なんて恐ろしいゲームなんだよ…!






「そらっ!!」





全員が割り箸クジに手を伸ばし、引き抜いた。




………




それから、奇妙な間があった。





ク…ククク………





なんとも不穏な笑い声が部室に響く。






ダンッ!!






…と、同時に岳人の拳がテーブルを揺らした。

その手に握られた割り箸の先にはマジックで塗られた赤が燦然と輝いている…



岳人はニヤリと笑って、半ば自暴自棄気味に言った。





「……あばよ、跡部!鳳!」




───長太郎!



てか、岳人…もう見境がついてねえ。

両隣を指名しやがった。





「…チッ、また俺か…」


「こ、困ったな……」





二人が口々に言いながら、紙を選んで手に取る。





──カチリ。





…瞬間、そんな音が聞こえそうな勢いで二人の形相がぱっと変わった。






跡部
「ジュース万引き」



「コンビニで若い女の店員がいるときに買い物。品物は自分」







危険だ…


だってなんかカード引いた二人の後ろにどす黒いオーラが見えてるぞ?






「…万引き…?てめぇら、俺様をナメてやがんのか…?」


「これは犯罪でしょう…?」






皆、顔が青い。


そりゃそうだ。俺も震えが止まらない。


奴らの目は本気だ。


俺たちはとりあえず、コンビニに着いていくことにした。


一般市民を巻き込むわけにはいかねえ。





で、コンビニ。





遠巻きに見ても、レジの後ろに置いてある電子レンジは岳人のせいでまだ若干黄色い気がする。

そして、これから起こることを思うと…良い迷惑だろうな。このコンビニにとっちゃ…



あとで多めにチーズサンドを買ってやろう。



さて…跡部はジュースの棚へ、長太郎は弁当のバーコードをはがして自分の腕に張りつけ、レジに向かったらしい。



セリフを…





「…温めてください。…貴方で」





うわ、本当に言った。


が、意外にもレジ係の女の子は顔を赤らめ、その場を動かなかった。





ドドドドド…
ガラガラガラッ


バターーーンッ






「あっ、万引き…」


「しっ、もうしばらく俺を見ていて…?」





女の子は完全に長太郎・マジックにかかったな。


お、長太郎が出てきた。愛想よく手を振ってやがる。







…部屋に戻ってきた。



もう全員が暗い顔をしている。


すでに笑えないゲームになっていることを自覚してるのか?





「さ、続けんで…」





忍足の声が裏返っている…。





「あ…俺ですか」





日吉が皆を舐めるように見渡す。


…目が合った。





「じゃ、宍戸さん、樺地」





樺地…



参加してたのか…かわいそうに。


跡部の道連れって訳か?まったく…






「ウ…」





樺地
「乙女チックなポエムを発表」






…嫌だ…


心の底から嫌だ…。


ああ、人の事ばかり言ってらんねえのか。

俺もカード引かないとな。


しかし…何が出てもおかしくないこの状況。

これまでの命令の過激さを考えて、気が重くなる。

楽なのが来てくれれば嬉しいが…



ぴらっ





「…うっ…!」






宍戸
「ナプキン買ってくる」






誰だ…!?





「…んだよコレ!ゴム買うより恥ずかしいだろうが!!」





しかしそんな俺の事を、奴らは必要以上に優しい瞳で見るばかりだ。


そこで皆を見回すと、一瞬だが長太郎が目をそらした。





「お、前、かああぁっ!!!」





俺は叫び長太郎に駆け寄った。


俺が肩をつかんで揺らすと、長太郎は泣きそうな顔で叫んだ。





「だ、だって!さっき当てられたうっぷん晴らしなんです…!」





…言わなくていいことまで言ってしまうとこは長太郎らしいんだな。



ああ、クソッ。



んな事ありかっ





数分後…





「ほら、買ってきたぞ!!夜用スーパーガードだっ」





ぼんっ、と床に叩きつける。





「なんで夜用?」


「見ないで買ってきたんだよ!高いんだよナプキン!!マジであったま来たぜ!」


「…せっかく宍戸先輩のレギュラー落ちが決まったと思ったのに…しぶといんですね」





……こいつ…



…怖いぞ、目が。


なんというか、捕食者が獲物を見つけた時のそれに似ている。



ちなみに、樺地のポエムについては


「キュンキュン!」とだけ示しておこう。






「じゃ、次の王様は誰だ?」






ズガァァァアアン!!!!





突如、鳴り響いた轟音。


一瞬にして部室は白煙に包まれた。






「……?!」






一体何が起きた?



誰もが突然の出来事に息を呑む。


というか、ビビって止まった。





氷帝氷帝氷帝氷帝…





おお、この声は…





王者は跡部!王者は跡部!王者は…





パチィンッ…





小気味よい指の音が響く。
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