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□4月の雨
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4月。


花散らしの雨が降る…。





「降ってきたか…」
どんよりした空からポツポツと落ちてくる雨粒を見上げて呟く。
近くのコンビニまでだからと傘を持たずに出たのが間違いだった…。

コンビニの袋を手に走る。

近道の公園を横切ろうとしているうちに、雨足はだんだんと強くなってきた。



―チリン―


どこからともなく聴こえた鈴の音に思わず足を止めた。


「お前…捨て猫?…違うかぁ…鈴が付いてるもんな。……早く帰れよ、濡れて風邪ひくぞ…」


小さな白い子猫に話しかけている君を見つけた。
“早く帰れよ”って言いながら…その瞳は“独りにしないで”と言っているように見えた。

「ユチョン」

声をかけると、少し驚いたような表情で、ゆっくりと振り向いた。


「ユノ」


力ない笑顔を見せる。

「こんなとこで何してんだ?風邪ひくぞユチョン」

「ん?……うん」

あの白い子猫はいつの間にかどこかへいなくなってしまった。

「とりあえず雨の凌げる所へ行こう」

そう言って、二人で屋根のあるベンチに腰かけた…。




雨に濡れた髪の毛をくしゃくしゃっと手で弾く。

顔についた雫が雨なのか、それとも涙なのか…パッと見ただけでは判断がつかなかった。

「元気ないな…大丈夫か?何かあったのかユチョン」


「…………うん」

こちらを見ずに応える君。
憂いの秘められた表情…。
いつもの愛嬌のある君とは違う…。


―綺麗だ―


初めての感情だった。
弱々しく、悲しそうな君を…抱き締めたいと…思った……。

「ユノ…」

「ん?」

「失くしものを…したこと…ある?」

「え?」

「大切な…大切なものが…この手から…離れて行っちゃったんだ…とても…大切だったのに……」

そう言いながら君は、見つめていた手のひらをぐっと握り締めた。

「ユチョン?」

「本当は…手離したくなんか…なかったのに……バカだな…オレ…」

俯いてた君が…さらに俯いて…表情すら見えない。
全身で辛いと叫んでいるように見えた…。

「ユノ…」

「ん?」

「泣いても…いいかな……」

小さく…頼りない声で君が言った。





俺はそっと君に寄り添って、その小さく震える肩を抱き締めた……。
一体何があったのか…。
誰のために、そんなに心を痛めているのか…。
気になったけれど…それを尋ねることは、さらに君を苦しめてしまう気がして…。


そんな儚げな君を見て……何故だか俺の心も痛む…。


そして、少しでも君の力になりたいと…側にいたいと思う自分がいる…。


―この感情は…何……?―


戸惑う俺に君が言う。

「ユノ…ありがとう」

「……あ、あぁ…」

なんだか切なくて仕方なかった…。




この想いが…恋…なのなら…。
そして、今君が…恋…のせいで辛いのなら…。
俺は負担をかけないように…君の支えになれるように…ただ、側で見守るから…。


誰よりも、真っ先に頼ってもらえるようになるから…。

いつか…君が…特別な笑顔を見せてくれたら…嬉しい…。






4月。





花散らしの雨が降る。





俺に降ってきた、突然の恋…。





俺は…君に…恋をした。

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