夜叉と結界師

□第3話 銀色
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草むらから現れたのはとても人間とは思えない色を纏っていた。






















暗闇で一層目立つ白地の着流しに青い流水紋。










腰には何かが彫られた木刀。









月の光を浴びて鈍く光る銀色のくるっくる天然パーマ。











向けられた瞳は死んだ魚のような紅く、良守達を見た途端凝視した。









そしてそのリアクションは良守達本人も。











「……え〜と…」


先に口を開いたのは銀色の男。

この状況に全く呑み込めていないようだ。


「斑尾、本当に人間なのか?」


良守が斑尾に囁く。

まあ周りにだだ漏れだが。


「あたしの鼻に間違いはないよ!人間の匂いさ、れっきとした」


「おいおい、何言っちゃってんの?銀さん人間じゃなかったらなんだっての?

怖いこといわないでよ。てか何?そこのワンちゃんは。なんで浮いてんの?

なんで喋ってんの?まあ喋ってんのはよしとしても、浮いてるのは捨てがたい!

アレっていうなよお前。スタンドじゃねーよな!?怖いってわけじゃねーよ!?

ただ誰だって信じたくないことの一つや二つはあるじゃん!?俺もその一人…ぶふぉ!!」


時音の結界が銀色の男の顔に真正面からクリティカルヒット!

男は盛大に鼻血を噴き出しつつ後頭部から倒れこんだ。

まあ一人で話を大きくし始めた奴にはこれくらいのダメージを与えて止めるのが一番なのだろうが。

銀髪は目を回して気を失っている。


「どうすんだ?時音。こいつ気ぃ失っちゃったぞ」


良守が聞く。時音は銀髪を見下ろしながら一言、


「良守、あんたんとこに連れて行きな」


冷たくそう言い放った。

固まる良守。


「…なんで?」


「うちは女性ばかりだし、そこに男を入れるのもアレでしょ?

だからここは男だらけのあんたんとこへ連れてくの」


「ああ、なるほど…」


妙に納得。口では時音に勝てない良守は渋々了解した。


「今日はあたしが妖退治しとくから、あんたはその人を連れて早く家に帰んな」


淡々と良守がこれからすることを説明していく時音。

良守はあやふやな返事を返し、時折倒れこんでいる銀髪をチラ見していた。










そして良守達は気付かなかった。






















その銀髪が本当は気を失っていないことを……。
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