夜叉と結界師

□第14話 強制です
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「ん?良守?なんか用?」



銀時は手にある食いかけたせんべいをひょい、と口の中に放り込んだ。

バリボリという荒々しい音が部屋中に響き渡る。


あ、この人夕方言ってたこともう忘れてる。

良守は軽く脱力した。



「なあ銀さん」



「んだよ?」



「俺が夕方言ったこと覚えてる?」



「…夕方言ったこと?なんか言ってたか?お前」



きょとん、とした顔で言う銀時。


良守は内心物凄い溜め息をついた。

あくまで表には出してはいない。



「だから、烏森の件だよ。人の話聞いてた?」



「烏森?えーっと…」



考え込む銀時。

どうやら本気で忘れていたようだ。


暫くの沈黙ののち…。



「あ、あの話か」



なんとも小さなリアクションで銀時はそう言った。



「やっと思い出したのかよ…」



やれやれ、という表情で言う良守。



「だーかーらー、俺は行きたくねえって言ってんだろうが」



と、銀時はせんべいを一枚手にとって言った。

あ、まだ食うのね。



「でも、銀さんが行ってくんねーと困るんだよ、いろいろと」



「はあ?なんでだよ」



銀時の眉間に皺が寄る。

怒っているわけではなさそうなのだが、相当行きたくないらしい。


良守はその質問を予想していた。

内心ほくそ笑む。



「だって銀さん戦闘強いんでしょ?俺その腕前が見たくてさー」



「何言ってんだお前。俺は剣使うんだぞ?お前は結界だかで戦闘すんだから意味ねーだろーが」



「もしもの時のためだよ。それよりも銀さん、まさか妖にも勝てないから言ってんの?」



不敵に笑みを浮かべる良守。

カチン、と銀時の負けず嫌い精神が揺さぶられた。


そう、良守はこれを狙っていたのだ。

銀時の負けず嫌いを逆手にとる。


我ながら賢い考えだなとも思えた。


ちなみに銀時の負けず嫌いが判明したのは今日の夕方。

烏森の話を出した時である。


銀時はう〜んう〜んと唸っている。

どうやら行こうか行くまいか悩んでいるようだ。

要するに今簡単にいえば自殺しようかするまいか悩んでいるのと同じことである。


良守はそこからさらに追い打ちをかけることにした。



「妖は女の時音でさえ倒せるのに、男で大の大人の銀さんが倒せないなんてな〜〜」



最後の無駄な伸ばし方が無駄にムカつく。

無駄という言葉を無駄に使っているがそれほどムカつくということである。



「〜〜〜〜っ!クソったれがァァァァァ!!行ってやろうじゃねーかァァァ!!」



とうとう言っちゃった銀時。

しかも大声で。


良守は心の中でガッツポーズ!!



「よし、決まりだな。じゃあ早く支度っていうか準備してきて銀さ…」













どどどどどどどどどどど!!











「……」



銀時は良守の台詞が言い終わる前にけったいな足音をたてて自室(仮)へと走り去っていた。

いや、焦らなくてもいいんだけど…。



良守が走り去って行った銀時に一言。



「銀さんが馬鹿になった…」ポツリ
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