夜叉と結界師
□第16話 遅い!
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「遅い!!」
それが烏森に到着した良守達への時音の第一声であった。
時音は今まさに鬼の形相だ。
「アンタいっつも遅いけど今回はそれ以上に遅い!何してたのよ今まで!」
時音が良守に詰め寄る。
ちなみに銀時は時音の迫力が凄いので斑尾の後ろに避難。
「ま、待てよ時音!こっちはこっちでいろいろ忙しかったんだよ!銀さん引っ張り出すのに苦労したんだから!」
良守が負けじと反論する。
「嘘おっしゃい!貴方こんな大の大人が夜を怖がると思ってんの!?子供じゃない!あたしにそんな嘘は通じないわよ」
時音は引かない。
というかさらりと銀時にダメージを与えた。
勿論精神的な意味で。
「だってさ。大の大人が夜を怖がるわけないって」
「う、うるせー!」
斑尾がこっそり言った。
「本当なんだってば!銀さん夜駄目だって言うから俺が上手く騙してだな…」
「お〜い良守く〜ん?今聞き捨てならねーよーなことが聞こえたんだが?」
「あ」
やべ、と思った時には既に遅い。
うっかり口が滑ってしまった。
ゆっくりと銀時の方を向いてみる良守。
そこには背景にゴゴゴゴゴという音を背負った銀時の姿が。
あ、あの音見たことある。
よくこう物凄いことをする前に出す音だよね、なんて思ってみたりして。
だがそんな下らないことを考えてもこの状況は変わらない。
「…ぎ、銀さん?」
「そーかァ…要するにィ?良守君は俺のことを利用して…」
「い、いや、でも最終的には銀さん自分で行くって…」
「おしおきしなくちゃなァ…」
ニタリと笑って指の骨をボキバキ鳴らす銀時。
正直恐ろしい。
俺今日命日になるんじゃないかってくらい。
「ま、ま、待とう?ちょっとは話を…」
と、その時。
良守は言葉を切った。
そして斑尾や白尾、時音も動きを止める。
「侵入者だぜハニー」
「ええ、分かってるわ」
「今回はでかくはないけど量が多いよ」
「本当か斑尾」
2人と2匹の顔が変わる。
いわゆるシリアスモードだ。
「じゃあ張り切っていくか」
「一匹も残すんじゃないよ良守」
「時音もな!」
一瞬顔を見合わせたかと思いきや、2人はそう言うと走り出した。
斑尾と白尾も主人についていく。
そして気付けば残されたのは銀時一人であった。
「えー…ちょ、こんなとこに一人残さないでくんない?」
呟く銀時の言葉は虚しく消えた。