夜叉と結界師

□第18話 少なかった理由
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横たわっているのは妖の屍。

どれもこれも一太刀でやられたような痕跡がある。

そこからの出血自体は少ないらしい。


だが、数が多過ぎる。

軽く50は超えているだろうというくらいに。

そりゃ異臭もするわけだ。



そして良守が息を呑んだのはもう一つ理由があった。



それは







屍の真ん中で忽然と立っている銀髪の男。



木刀を片手に累々と横たわる屍を見下ろしていた。



返り血はさほど浴びてはおらず、着流しに点々と付いているくらいだった。






これを全て銀時がやった?

木刀で?

見たところ怪我もしていないし…。


だとしたら…一体何者なんだろう?

坂田銀時という男は。


良守は聞きたいことが山ほどあった。

だが、口に出ない。

もう喉元まで来てるのに、出てこない。



「…ぎ…」



「よう、良守」



良守の言葉を遮って銀時の言葉が降りかかってきた。

聞いたこともない声音で。



「いやな〜俺があっこで突っ立ってたらいきなりこの気味悪い奴らが襲いかかってきてよー。もう怖かったのなんのって…。で、気付いたらこーなってた」



銀時がスラスラと言った。

まるで心を読まれたかのように言われた良守は本当に言葉を失った。



「…これ、全部銀さんが?」



良守がおそるおそる聞いてみた。



「ああ」



「木刀で?」



「ああ」



「…怪我は?」



「ねえ」



「………」



会話が途切れてしまった。

気まずい、気まずすぎるこの空気。


何より銀時の纏う雰囲気がいつもと違う。

なんというか…儚い気がしてならないのだ。


これ以上踏み込んでしまってはいけない、そう直感がいっている。





これほどの強さ。



彼は何者なんだろう。



深く関わっていくごとに分かるのは



彼の哀しき過去のこと…。

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