短編

□見ないで、
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( 秘密を守る為に体を売った残夏さんと残夏さんをずっと好きな連勝さんの話 )









───見ないで、


汚らわしいボクを、見ないで、そんな目で見ないで、汚らわしいものを見る目で見ないで、もう見ないで、見ないで見ないで見ないで。─────










ザァー、と細かい雨が頬や体を濡らす。人気のない路地裏で細く窶れ、座っている残夏を偶然見つけて駆け付け、抱き締めようとした。だが、その手はパチンと返され、残夏は俺を避けるかのように冷たい目で睨みフラフラと立ち上がりだした。


「残夏、心配したんだぜー。1ヶ月振りだろ、?随分痩せたよな。ちゃんと食ってんのか、?」

「…心配されるような事はないから平気っ、ちゃんと置き手紙見たでしょ。もうボクはあそこを出たの」




1ヶ月前、残夏が居なくなった。辞めるとか渡狸もミケも俺も、誰一人聞いてなく、突然居なくなった。置き手紙だけ置いて妖館を出ていった。その置き手紙の内容もさらっとしたもんだ。残夏のマスコットキャラクターみたいなうさぎの奴に吹き出しがあって、「みんな、元気でねーっ☆」などと、ふざけた字で書いてあった。俺はすぐに家を出た。まだそこに残夏が居る気がしたんだ。でも、どこを探しても、残夏は居なかった。必死に探しても、どこにも居なかった。渡狸もミケも蜻蛉も凜々蝶もカルタも野ばらも、皆で探したんだ。

そいつが、今俺の前に居る。無理矢理にでも妖館に連れ帰りたい、俺の脳の中にはそれだけしかなかった。残夏の事なんか、残夏の気持ちなんか思っていなかった。
先程返された手で再び残夏の細い手首を掴んだ。




「帰るぞ、残夏。お前はあそこに帰らなきゃ行けねぇ」

「なんでそんな事レンレンに言われなきゃいけないの、?もうボクたちは関係ない、他人だよ。他人」

「他人なんかじゃねえっ!!俺、俺らは」



残夏が目線を逸らして弱々しそうに告げた。「他人」じゃねぇよ「家族」なんだよ、という言葉に喉が詰まり、上手く話せない、叫べない。こんな時になんで言えねぇんだよ。残夏はブンッと俺の手を振りほどき、俺が握った手を反対の手で擦った。


「俺らは、?…分かったでしょ。もう他人、他人なの。顔、見たくないからボクの事探そうとしないでー、ボクなんでも見えるんだから、今度会ったらなんかしちゃうかもね、」

「あ、おい、残夏っ」

「今度会う日はまた転生した時かな、」



ザア、と雨が、強くなる。残夏は遠ざかっていく。後も向かない、手も振らない、笑顔も見せない。無力な自分の手を握る。残夏を、止められなかった。残夏に、言えなかった。残夏、残夏、残夏。でも残夏、お前は、
お前は、なんで




「今にも泣きそうな顔で、そんな事が言えんだよ、」




ずっと見てきたから、分かる。あの顔はなんかあんだろ、引き止めて欲しいんだろ、誰かに傍に居て、欲しいんだろ。



遠ざかっていく、残夏を無意識に追いかけた。足が導くように動いていた。頬を濡らすものは雨だけでは無かった。気がする、
















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ヤマナシオチナシイミナシ\(^^)/

初のシリアスだから続けるつもり!!

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