Long・雪月花
□07.伸ばした先に
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ナギやカルラでも越えるのに数ヶ月かかったこの壁を
目の前にいるあなたはまるで何もないかのように飛び越える
これを怖く思うと同時に
嬉しく感じている私もいた
「何か礼をしないとな…」
そう呟いたエイトくんの言葉ではっと我に返る
「あ…気にしないで…その、」
壁に隠れてばかりな私。
そんな私に手を伸ばしてくれる人達。
いつか私からも手を伸ばせたらいいな
いつか、いつか…
そう思って、いつも後回しにしてきた
そのいつかは、きっと今だ
「友達、だから…」
エイトくんを見上げて、言った
「…そうだったな。ありがとう」
じゃあ、と言って踵を返して去っていく後ろ姿を見つめる
きっと彼は
私が心の中ですごい葛藤をして
その結果口にした一言だった、なんて思ってもいないんだろう
でも、それでいい
今度こそ私から
私から仲良くなるんだ
引っ張り上げて。連れ出して。
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