Long・雪月花
□09.Crimson lake
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″悪い話ではありません″
電気を消した部屋の窓から見る夜空は、星がひどく瞬いて見えた
午前1時の女子寮は物音ひとつしない
私は院長から手渡されたこの…朱色のマントを手に、ベッドの上にかれこれ3時間くらい座っていた
″悪い話ではありません″
さっきからこの言葉が頭のなかでループしている
そう。
悪い話ではなかった
むしろ幻の0組に編入なのだから、喜ぶべきなんだろう
なんだけど…
人見知りな私にとってこれは危機的状況だった
果たして生きていけるのだろうか
そのことばかりが気になって、緊張して
上手く眠れない……
翌日
雲ひとつない青空が見えるエントランスの窓辺で、私は0組の指揮隊長を待っていた
もちろん表情は曇ってる
先程通りかかったカルラが私の朱いマントを見て何事だ、という顔をしていたけれど、クラスメイトにひっぱられてそのまま行ってしまった
きっと後日すごい質問攻めに遭うんだろうなぁ…
なんてぼんやり考えていたら後ろから近づいてくる気配がした
ついにこのときがきたか、なんて思って振り返る
そこには武官の制服を着た男性がーー
「お前が名前か」
「…はい」
自分の声がうわずっているのがよく分かる
「私が0組の指揮隊長のクラサメ・スサヤだ」
あぁ、案の定。
ついてこい、と言われてクラサメ隊長の後ろについて歩き出す
どうしようもなくビビりな私の心臓が、狂ったように飛び跳ねだした
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