Long・雪月花

□09.Crimson lake
2ページ/2ページ






廊下のつきあたり
0組の教室の大きな扉の前で私は隊長の″入ってこい″の合図を待っていた

中から聞こえてくる騒音に不安がつのる
なんだか罵声のようなものが聞こえるけれど…

気のせいだということにしておこう


本日37回目の深呼吸をした時、扉の向こうから凛とした声がやってきた
「候補生名前、入れ」


失礼します、と言って大きな木製扉を開ける

…あぁ、キライだ。
この瞬間。

クラス中の人に注目されるこの瞬間が、大嫌いだ


私に注がれる視線、視線。
それを避けるように、かいくぐるように

下を向いたまま早足で教壇へと向かう


クラサメ隊長の隣まで半ば走るように行き、恐る恐る振り返る

「本日付けで0組に編入となった、元9組の名前だ。彼女には主に、クリムゾンにおいての9組と0組の橋渡しをしてもらう」
淡々と説明する隊長の横でうつむいていた私に、隊長が一言喋れ、と囁いた

はやくこの場所から去りたい…
そう思って、ぼそぼそと喋る

「…名前です。…よろしくお願いしま…」


″す″は言うことができなかった
″す″を言うときに、チラッと上を見たから

クラスの人達を見たから

…見つけてしまったから


一瞬のうちに真っ白になる、私の脳内

編入、ということだけに気を取られて、まったく気づかなかった


あなたも…0組だったね…



エイトくん。




歯車は加速する





[目次]
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ