Long・雪月花

□12.邂逅
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それから午後の講義はずっとデュースが隣にいてくれて
なかなか人との関わりを持たなかった私にとって、それは少しこそばゆくて、うれしかった

講義が終わると、デュースのそばにケイトがやってきた
「はぁー、疲れたー!!」
「お疲れ様です」

講義中、ケイトは寝ていた気がするがそこは黙っておこう


「今日はいつもと違う席に座ってんのね」
「はい。今日は名前さんと仲良くなろうと思って」
ね、と笑顔で言うデュースはさながら女神だ

「ふーん…ってか、名前、アンタ0組にきて1週間たつのにまだ緊張とかしてるわけ?」


なにげない、ただただ当然のありふれた質問。
けれども、その質問は殻を破れない私に深く突き刺さる

何も言えない私にケイトは続けた


「まぁ、今まで何があったかとかアンタの性格とかよく分かんないけどさ、そんなに身構える程じゃないって」


軽い調子で紡がれた言葉は私の心をくすぐった

…そうだ。
いつまでもこのままでいられる訳がないのだ
手を差し伸べてくれている人が2人もいる

変わろう。
…変わってみせよう。


「…うん。そうだね。…ありがとう」


精一杯の笑顔は自分でも分かってしまうくらいぎこちないものだったけれど、2人は笑ってくれた



「んじゃさ、仲良くなるついでにリフレでも…」
「ケイト」
ケイトを遮った声の方を見ると、エイトくんがこちらへ歩いてきた


「この間貸した教科書、返してくれないか」
「あ!!ごめん、すっかり忘れてた!!部屋にある!!」

弾かれたように扉の方へ走るケイトがまたねー、と後ろ手に言う
前を見ないと危ないですよ、とデュースが声を飛ばした


「名前」
私も何か言おうとケイトへ向ける言葉を探していると、エイトくんが私を呼んだ


顔を上げると、視線があった


「名前、また明日」
軽く笑みをこぼして彼もまた扉へ歩き出す

「ま…っ、また明日…!!」


私の返事を背中に、彼は廊下へ消えていった


わわわ…と軽くパニックな私に、隣から一言。


「よかったですね?名前さん」
いたずらっぽく笑うデュース


「…からかってるの?」
「ふふっ。どうでしょう?」
夕日の差し込む教室に2人分の笑い声が響いた。


トモダチ





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