Long・雪月花

□13.トゴレス要塞
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風の月22日
朱雀はミリテス皇国への反撃の足掛かりとして重要視していたトゴレス要塞を奪取すべく、大反攻作戦を決行した

0組へはクリムゾンが発令され、私をはじめとした少数で機密文書の回収を行うことになっている
なってはいるけど…


まだミッションは始まっていないというのに私は真っ白になっていた
待機場所の隅っこで呆然と立ち尽くす



まだ体の震えが止まらなかった

瞼の裏に貼りついて消えないさっきの映像


だって、あれではまるで…
魂、を…っ



「名前、大丈夫か?」

はっと振り向くとエイトくんが心配そうにこちらをみていた
目から溢れた涙が頬を伝った


あぁ、泣くなんて情けない。
恥ずかしさで真っ赤になるのが分かった

「だ、大丈夫っ…」

ごしごしと無造作に目尻を拭った


止まってよ、
子供じゃあるまいし。
あなたにこんな姿、見せたくない…



「…」

ぽん。
肩に、温もり。
見るまでもない、彼の手だった





何を言うわけでもなく彼はそこにいてくれた
言葉じゃなくて、態度で示す
この前もそうだった

私にはないものを持っている
すごく、まぶしかった





しばらくして遠くの方で爆発音が聞こえた
爆風にのって、なんとなく人の怒号も聞こえる気がする


「…そろそろだな」

隣のエイトくんが呟く

「いけそうか?」

まっすぐに見つめられ私はこくん、と頷いた



「…何かあったら俺がフォローする」


彼は凛々しく私を射抜くように見つめた
強い人だ
そう思った。
この人の強さはどこからくるのだろう?



「おーい、そこの二人!!そろそろ作戦始まるからこっち来て!!」
見ればケイトが叫んでいた


「いくぞ」
「…、うん」
怖いものなんて、なにもない。





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